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地に堕ちた愛のあのレビュー・感想・評価

地に堕ちた愛(1984年製作の映画)
4.7
過去を演じながら現在を手に入れていく女性たちの力強い映画でした。支配している側は、全てを見通しているようで、天使が割れたことも、もう一度取り付けられたことも知らないという関係性の逆転が、演劇の中でダイナミックに起こっていくところが面白かったです。

この逆転は、恋愛感情を捜査に悪用した刑事を術中にはめる「彼女たちの舞台」と同様で、給仕を労うようなラストからも、改めてリヴェットは女性や労働者といった被支配者になりやすい側の視点に立った人だということを実感しました。

リヴェットはただファンタジーをやっているようで、実は物凄くリアリストで、フェミニストで、そして優しい人だったんじゃないかと勝手に思いました。社会への反逆だ、とセンセーショナルな映画を撮りながら、裏でハラスメントし放題な業界人とは違うような気がします。期待しすぎかもしれませんが。それでも「人の弱みを握ること」には人一倍敏感な人だということは確実です。

エミリーが演劇の終わりを見たところのカットの繋ぎ方は本当に分かりませんでしたし、電車の彼女で何となくオチは察せるにせよ、あの赤い服が現れてきたところは、現実が虚構を超えてきた感じがして見事でした。そして演劇のラストを超えて、扉から出ていく女性たちが自分たちのラストを作るという、ここまでオチが何重にも重なった映画はないんじゃないかと思いました。

しかしあの自然の音がする部屋の描写は良くわからなかったですね。建物の使い方は予想の範疇を超えてこなかったような気がします。
あ