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ひかりごけのtakのレビュー・感想・評価

ひかりごけ(1992年製作の映画)
3.5
食人は、映画で描くにはたいへん困難なテーマだ。好んで観たいものではないし、何よりもモラルに反するテーマだ。レクター博士がその行為を語りながら、舌なめずりする場面なんてゾッとする。アンデスに墜落した飛行機事故の生存者を描いた「生きてこそ」でも、実話だとはいえ肯定的に捉えるのは難しい。深作欣二監督の「軍旗はためく下に」も忘れがたい。そして熊井啓監督の「ひかりごけ」も強烈なインパクトある作品だ。

流氷が流れ着く北海道の岬に閉じ込められた海軍兵4人。極限状態で彼らが何を考え、どう言う行動をとったのか。次第に狂気に堕ちていく様を舞台劇風に映し出す。最初はタブーを犯すまいとする彼らが、次々と仲間が亡くなり、瀬戸際に立たされた時、ついに禁断の炎に触れる。

一人だけ生還した主人公。最初は英雄だと言われていたのが、事実の発覚で罪人として法廷に送られる。

この映画が見事なのは、この法廷場面。人を食べると頭の周りに黄色い輪(ひかりごけ)が見えるようになる、という古くからの言い伝えを、絶妙なタイミングでビジュアルで示す。主人公の行為だけでなく、「人を食い物にする」現代社会を静かに告発する。この社会を見渡せば、ひかりごけが見える奴がちらほら。
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