映画初心者の青二才

ひかりごけの映画初心者の青二才のレビュー・感想・評価

ひかりごけ(1992年製作の映画)
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『我慢』の先にあった不条理。
(食らいすぎてスコアつけれません)

実在の事件から着想を得て描かれた作品。
映画以外でも劇団四季がストレートプレイでの上演を行ったり、團伊玖磨作曲のオペラになったりもしている。

極寒の地で食糧もなく助けも来ない絶望的な状況で、それぞれが『我慢』の限界を迎えた結果が招いた出来事。
生きる事を選んだ(死ぬ事を我慢した)船長の選択は正解だったのかもしれないし、他の選択肢があったのかもしれない。
どちら側になっていても正解が分からない。
倫理的にとか道徳的にとか、そういった面たけでは裁けない。船長が「五助、八蔵、西川に裁かれたい」と言った気持ちが何となく分かって苦しかった。

YouTubeだったりでヤバい事件扱いされているのを見かけるけど、ヤバいの一言で片付けてはいけないと思う。
海外でも飛行機墜落事故で亡くなった方を食べたという出来事があったので、身近で起きる可能性がある事を忘れてはいけない。

船長役の三国連太郎さんは圧巻のお芝居。
洞窟内での船長と、裁判シーンで船長は本当に同じ人なのかと思うような顔つき。すごい。
五助役の杉本哲太さん、出演時間は長くないけど、大きな爪痕を残していて流石。ほんで昔から格好良いのね。
西川役の奥田瑛二さん、こちらも圧巻のお芝居。五助を食べてしまった罪悪感と食べなければ自分が死んでしまっていた葛藤だったり、恐怖心が細部まで表れていた。
そして八蔵役の田中邦衛さん。最初は明るい奴だと思っていたけど、大仰に見えるけど不自然でない芝居。表情ひとつ取っても八蔵の心情がつぶさに分かるような。

名俳優揃いすぎて、もし再演があったとして超えられないと思う。
あの極限状態はあの4人の名俳優でしかハマらないと思う。