ますのすし

ひかりごけのますのすしのネタバレレビュー・内容・結末

ひかりごけ(1992年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

「わたすはただ我慢をしているだけです」

戦争下の飢餓状態においての食人は罪か。
軍属漁船が故障遭難、厳冬の果てで生き残った仲間が飢えて死んでいくたびに船長はその身をを口にして生き延びる。

「お前に喰われるくらいならフカに喰われるだよ」に「どしてえ、どうしてそんなに意地の悪いこというんだ」と返す船長。

わざわざ屠してまでじゃないけどもうそこにあなたの魂は宿っていないから、宿っていないけど大事な仲間だったから、極限を生きのびるためにその肉体を残さず大事にいただきますという気持ちなんだろうか。
仲間の骨を洗って遺った手拭いや衣類で包みながら箱にしまうときの「ありがとうね」の声色には、合掌の温度さえ感じてしまった。

同じ経験をしたこともない者に気持ちがわかるか(怒りではない)という気持ちと、それを知らない者に裁かれることへの違和感というのかな。
そのうちの一人には生前はっきりとサメに喰われたほうがマシっていわれちゃったけど、裁いていいのは食べた三人だけと思っている様子もわからなくもない。
罪人(?)自身のまるで本質を見据えているかのような言動が、「それ以外本当に何もない」あの環境を経験していない人の目には精神異常にしか映らないかもしれない。

公平の場を謳う法廷においてのジャッジメントを見る瞬間もあって考えが巡る。
(戦時中の法廷の法衣、こんなんやったんやねという新鮮な発見もあった)

生き延びようとするのは罪ですか。


観るきっかけが某SNSの北海道のトド肉の串の話で、臭いが相当すごいらしいことから思考が展開され…
アザラシのお肉は臭くないのかな→そういえば昔冬の北海道で遭難してアザラシの干し肉食べて無事生き延びた人がいて実はアザラシじゃなくて人間の肉やったみたいな話あったなぁ(もはやお肉の匂いはどうでもいい)→調べた「ひかりごけ事件」
という経緯がありました(これもどうでもいい