てつこてつ

金閣寺のてつこてつのレビュー・感想・評価

金閣寺(1976年製作の映画)
3.0
あまりにも有名な三島由紀夫の同名小説の映画化。

市川崑監督による映画化バージョンに引き続き70年代にもATGで製作されていたとは・・。

高橋陽一という監督は、「西陣心中」「本陣殺人事件」なんかを見ていると、多分にアメリカンニューシネマの影響を受けているのか、良くも悪くもチャレンジ精神がどうも旺盛なようで。

この原作は自分も大昔に読んでいるが、三島由紀夫の文学は、とにかく日本語の美しさを改めて認識させてくれるほど完成度が高いので、実は映像表現に置き換えるのはとても難しいと個人的には思う次第。

今回の映像化作品では、篠田三郎演じる修行僧が金閣寺に放火するまでの経緯を、極めて観念的に描いているのだが、市川崑監督の「炎上」と比較すると、70年代作品らしく・・というか高橋監督のテイストなのか、どこかアングラ要素があって、とっても演劇的。

主人公が吃音持ちであることが原作でも非常に重要な要素ではあるのだが、本作ではその描写はあるものの、台詞やナレーションでは滑舌はなめらかという矛盾が気にはなる。

度々挿入される主人公のトラウマ、もしくは欲望の象徴ともとれるフラッシュバックのシーンが、ややしつこい。

市川悦子が演じる主人公の母親、加賀まりこが演じる遊郭の女郎などインパクトがあるキャラクターも登場するし、篠田三郎自体もいいんだけど、やっぱり低予算感、アングラ臭が漂うなあ。

監督が狙おうとしたものも分からないではないが、さすがに三島文学は手強すぎたか?

ただ、「炎上」よりも原作には比較的忠実だし、印象に残る美しいシーンもいくつかあったけどね。
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