湯っ子

ユキとニナの湯っ子のレビュー・感想・評価

ユキとニナ(2009年製作の映画)
4.3
子供の生活なんて、親の都合次第なんだ。もちろん、ママもパパも、ユキのことは心から大切に思っている。でもママとパパはもう、一緒には暮らせないらしい。
ユキはこの映画の中で、あまり大きく表情を変えることはない。もちろん無表情なわけじゃなくて、ほほえみもするし、友達と遊んでる時にはケラケラ笑う。でも、たぶん心の中にある気持ちにまだ名前がついてない。だから、それを表現するやり方がわからないんじゃないのかと思う。ママやパパが喧嘩したり泣いたり騒いだりしているのに、澄んだまなざしでそのなりゆきを見つめて、たまに小さな声で意思表示する。

切なかったのは、ある手紙を読みながら泣くママと、それを見つめるユキ。ママが必死に笑おうとするのに合わせて笑ってあげるの。ユキはママが自分に対して罪悪感を持ってることを敏感に感じ取ってるんだと思う。

ユキとニナのなかよし二人組は、本当にうつくしくてかわいくて絵になる。パリの街角も似合うしリヨンの森も似合う。上質な絵本を眺めているようだ。リヨンへ向かう電車の車窓の鮮やかな緑とノーテンキな音楽が、冒険に向かうワクワクを感じさせ、駅に降り立った時の静けさとの対比で不安を感じさせる。

それまでの日常からガラリと変わる森のシーンがこの映画の肝。キラキラ輝いていた森が、突然薄暗くなり風がザザーッと吹いてくる…森は異界だ。異界への旅を経て、少女はひとつ大人になる。新しい生活の中で、ユキちゃんは輝くような笑顔を見せてくれていた。
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