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ユキとニナのemilyのレビュー・感想・評価

ユキとニナ(2009年製作の映画)
4.1
フランスで暮らす9歳のユキはニナと大の仲良し。しかし両親が離婚することにより、日本に帰国することを聞かされショックを受けるユキは、ニナと一緒に両親に手紙を送る。しかし帰国はゆるぎないこととしり、ニナと一緒に家出をするのだった。

光と陰を利用した幻想的な映像美に子供たちの小ささを感じさせるカメラワーク、ユキの目線から両親の喧嘩など不穏な空気感をしっかり日常の”何気ないこと”の中で描かれている。それをなんとか食い止めようと手紙で愛を伝えたり、反発して家出をしてみたりする普遍的な子供の行動を、静かな自然美と構図にこだわった映像の中でじっくり描写する。

日本語とフランス語の言葉の温度感や空気を含むような間を非常に大事にしており、子供たちの構図やガラスを使った空間使いが絶品である。特に全面にガラス窓がある開放的なユキ達が暮らすアパート、日差しが降り注ぐ明るいはずの室内には陰険な空気が流れ込み、外に配置された人がそのガラス窓に映り込む。小さく焦点のあってない人がバッグに配置され、去っていくもの、ユキに会いにくるニナなど、まったく表情は見えなくともそこに感情がしっかり生まれている。

閉鎖的に空間をとらえ、ユキに流れる不安やどうしようもできない刹那を読み取る。ユキ越しに扉の向こうに両親が小さく映る。焦点はあくまでユキにあわされ彼らの表情は見えない。その会話は聞こえなくとも、うっすら浮かぶ夫婦の姿に、もう戻ることはできない破綻をみるのだ。
コインランドリーにユキとニナが座ってる、森の中引きのカメラで二人を小さく、そうして森を大きくとらえる。一つ一つの構図や配置が詩的で、子供目線えありつつもしっかり子供なりに考え、自分なりの結論に達していることが読みれる。

家出のシーンはしっかり全面に子供のワクワク感があふれ出し、逃げ出し駆け出す少女たちの後姿には瑞々しい音楽が寄り添い、遊びの数々、そうしてこの家出の数日がユキに大きな変化をもたらす様を、ファンタジー要素を持ち入り、フランスと日本をつなげてみせる演出に、子供の順応性と成長を見る。いつだって犠牲になってしまうのは子供であるが、子供たちはすぐに受け入れる。順応し、叶わない願いをしっかり受け入れ大人に成長していくのだ。

しっかり子供からみた大人の葛藤や、子供に対する愛情も描かれており、それを受け入れ、大人たちの刹那も察する子供たちを見て、また大人達も成長していくのだ。あんなに日本に行きたくないと言っていたユキが、友達ができ楽しくやってる姿に本当に子どもはたくましいなと、観客である私もそんな彼女から大きなものを学ぶのだった。
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