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三人の妻への手紙のzkのレビュー・感想・評価

三人の妻への手紙(1949年製作の映画)
4.2
予備知識なしで観たが本作は1949年公開のラブコメである。
その後、無数の映画小説ドラマ漫画で定番化した演出のルーツが本作に散見できる。現在でも名声が届く作品というのは伊達ではない。

1つ大きな特徴はアディという作内に一切登場しない人物がキーになっている演出だろう。
3人の妻たちは、それぞれアディという魅力的な女性に引け目を感じているせいで自分の夫は自分よりもアディを選んでしまうのではないかという共通の疑念が、ドラマを成立へと導いている。これにヒントを得た作品を多く目にした記憶がある。
同年製作の映画、第3の男は本作の影響下なのかはわからないが、それを逆手に取る演出だったとわかる。

他にも貧しさを表現するために、電車が通る度に揺れる家というのも無数のフォロワー作品を生み出した演出と思う。主に昭和期に大量に見掛けたあの芝居の元ネタを見たという感慨がある。

この家が印象深いが、現在時間軸は開放的なピクニック先であるのに対し回想シーンはすべてセットを思わせる屋内、もしくは夜の車内というのもコントラストが効いている。故に複数人の回想が入り交じる構成にもかかわらず観ていて混乱がない。

三者三様の妻(と夫)のキャラクターの描き分けも見事。
教科書級の映画なのは間違いないと感じた。
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