映画は遠い過去のはなし

謎の下宿人の映画は遠い過去のはなしのレビュー・感想・評価

謎の下宿人(1944年製作の映画)
3.2
前半で犯人が分かってしまう。どんでん返し無し、紆余曲折も無しの直球勝負なところが潔い。
冒頭からの夜のロンドンの街。深い霧にガス燈、濡れた石畳み等、雰囲気描写に加えてホームレスから警官、自警団、パブから出てくる酔っ払い集団が出てきたりと一連の流れが素晴らしい。

スリラー物には定番の暗がりでの階段ショット。登場人物によって手に持つ照明が違うだけで面白い。アルコールランプだったり、蝋燭立てだったり、細い棒の先に火が付いてる(名前がわからない)ような物だったり。

ヒロインのキティと殺人鬼のスレイドが憎しみと愛について語り合ってる場面で使われる鏡を使った芸術的ショットも素晴らしい。デパルマかよ。

一番のハイライトは劇場でスレイドが追い込まれるラストの一連のシークエンスだろう。
舞台の足場を走るスレイドの顔の光と影の表現。緊迫感のあるスレイドの表情。
袋小路に追い詰められてからのスレイドとスコットランドヤード警部達との睨み合いは、一切の台詞を交わさない。一触即発の緊張感とクリーガーの怪演の真骨頂。そして窓を突き破って川に落下する一連のシーンのあっけなさというか短絡的なところもインパクト大。