ゆっきー

イワンのゆっきーのレビュー・感想・評価

イワン(1932年製作の映画)
3.5
ジョナサン・ローゼンバウムのATB。

サイレント期の彼の作品には及ばないが、なかなか面白かった。トーキーになってもやっぱりアヴァンギャルド。やっぱりプロパガンダ映画ではある。

オープニングの河の水面と流れてくる流氷、進む船から河岸をとらえた移動撮影がドヴジェンコらしくて凄く良い。この移動撮影、ストローブの『ジャン・ブリカールへの道程』の元ネタでは?などと思った。

イワン少年と父親が、ダム建設のため召集され労働者施設に到着するシーンで、心躍らせるイワンが窓を除くと、夜にも拘らず昼の労働現場の光景(ここも凄いモンタージュ)の光景が映る。
この無茶苦茶な時制無視の繋ぎが凄い。
窓からイワンにあたるサーチライト?の光も美しかった。

中盤の息子を亡くした母親が猛ダッシュするシーンがこの映画の白眉。危険極まりない工事現場での横移動撮影が異常にスリリング。重量物をクレーンで落とすカットと母親の爆走をモンタージュする。事務所内の扉を開く運動だけを連続でつなぐカットも異様で良かった。


後半は髭のオジサンのプロパガンダ怒鳴りが多いのでちょっとアレだけども。でも最後の演説に乱入してくる髭親父がなにやら失言をするのだが、その後会場が沈黙に包まれる。ここの無音状態がなんと1分も続く。ゴダールもびっくりである。『はなればばれに』の元ネタはこれか??
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