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ブコウスキー:オールドパンクのwtritのレビュー・感想・評価

4.4
世の中的には無骨な作風やワイルドな人物像に焦点を当てた持ち上げ方をしているので、本人の性格としては一見裏表がなさそうな印象だった。

そんなブコウスキーという人間の、A面ではなくB面とはどんなものなのか、彼が生きた一瞬一瞬、心の奥底に隠されていた感情はどんなものだったのか。この映画ではそれらが丁寧に、さまざまな人の声を通じてブコウスキーのリアリティとして表現されていて、見終わったときには心臓を撃ち抜かれたような気分だった。
映像に収められたブコウスキー自身の声やふるまいのドキュメントとしての強さ、感動はもちろんだが、この映画を作り上げた作り手側、インタビューを受けた出演者の魂の純度のようなものにも感動した。

そういう意味で、映画の最後の方に出てくる「魂がにぶると形式が現れる」という短い詩がリンクしているようでとても印象的だった。この映画自体がまるで、解像度や3D、4DMXなどの映画の体験面での形式や、元ネタ頼みの映画づくりや人気役者の既視感しかない配役などのマーケティング面での形式に甘んじる、現代の映画産業とそれに慣らされた観客たちへのアンチテーゼのように感じられた。
とは言いつつ映画の楽しみ方は人それぞれ違うので一概に否定したいわけではないのであしからず、、。
でも自分にとって、何度も同じ熱量で見たくなる映画って見るたびに発見がある映画だと思うので、まさにこの映画が良い例。
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