dita

ブコウスキー:オールドパンクのditaのレビュー・感想・評価

5.0
痛みや苦しみを知っているからこそ、人の痛みがわかるのだと思う。諦めずに書き続けたからこそ、諦めるなということばが沁みるのだと思う。その生き方は傍からみればクズなのかもしれない。でも、穏やかに、真摯に話す彼のことばのひとつひとつが、わたしの心のいちばん深いところに沁みてきて、ずっと涙を堪えながら観た。

ボノ、トム・ウェイツ、ショーン・ペンが惚れこむ男、ブコウスキー。酔いどれ詩人、異端児、反骨精神、パンク(が何を定義するのかはよくわからないけど)…ブコウスキーは、いわゆる「はみ出し者」で形容されることが多い。が!このドキュメンタリーに映し出されるブコウスキーの可愛いこと可愛いこと。DVD特典に付いているホームビデオに至っては”Bukowski”ってプリントされたTシャツ着てますからね、ブコウスキーが。で、猫をよしよししていますからね、ブコウスキーが。本編のリンダへの愛を詠んだ詩を自分で朗読しながら泣いてしまうブコウスキーなんて見てしまうと、彼のことが更に好きーになってしまう。どこまでも人間らしいブコウスキーが好きー。

などというどうでもよい感想よりも、彼のことばを記したほうがよっぽど伝わると思うので、この映画で詠まれた詩をひとつ紹介したいと思います。

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"The Shoelace" by Charles Bukowski

it’s not the large things that send a man to the madhouse.
death he’s ready for, or murder, incest, robbery, fire, flood . . .
no, it’s the continuing series of small tragedies
that send a man to the madhouse . . .
not the death of his love but a shoelace that snaps
with no time left . . .
with each broken shoelace
out of one hundred broken shoelaces,
one man, one woman, one thing enters a madhouse.

so be careful
when you
bend over.

人を狂わすのは大したことじゃない
死も殺人も近親相姦も強盗も火事も洪水も受け入れられるのに
人を病院送りにするのは小さな悲劇の連続だ
愛する者の死でも寿命で擦り切れた靴紐でもない
100回切れてもたった1本の靴紐で
その1回で人は狂うから
だから屈む時は気を付けろ

(訳はDVDの字幕翻訳を引用しました)
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彼の墓石に刻まれていることばは、”DON'T TRY” 「やめておけ」
やっぱり格好良いぜブコウスキー、また色々読み返そう。
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