Mikiyoshi1986

最後の博徒のMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

最後の博徒(1985年製作の映画)
3.5
70年代に一世を風靡した東映実録路線も、山下耕作監督にとっての実質的な終焉は85年『最後の博徒』がそれに相当すると云えます。

時代劇~任侠映画の世界で様式美に拘った山下は、深作欣二監督と中島貞夫監督が中心となって新たに巻き起こした実録路線に上手くハマることができず、(一応「山口組」シリーズはヒットしたけども)
結局そのブームも数年で下火に。

しかしそれでも東映で自分なりのカラーを打ち出し続けてきた山下は、
最後までヤクザ映画に食らい付いた本物の"任侠"の男だったのかも知れません。

原点『仁義なき戦い』で描かれた広島戦争から最終作『北陸代理戦争』の三国事件まで、深作欣二が描いてきた実録やくざ路線を、大先輩である山下耕作があくまで任侠映画に仕上げた本作。

美能幸三と共に、広島抗争の沈静化に尽力した波谷守之(荒谷政之役)を松方弘樹が熱演!
山村組vs土岡組で始まった広島抗争は山村組の視点で描かれた『仁義なき戦い』に対し、
本作では土岡組に身を置いていた波谷の視点でこの抗争劇に明瞭なる奥行きを与えてくれます。

山村辰雄(山守親分)は金子信雄から成田三樹夫に、
美能幸三(広能昌三)は菅原文太から千葉真一に、
土岡博(土居組長)は名和宏から梅宮辰夫に、
悪魔のキューピーこと大西政寛(若杉寛)は梅宮辰夫から元野球選手の江夏豊に、
佐々木哲彦(坂井鉄也)は松方弘樹から峰岸徹に、
小原馨(上田透)は伊吹吾郎から泉谷しげるに、
共政会三代目の山田久(松村保)は北大路欣也から待田京介に、
そして山口組三代目・田岡一雄役は両方とも丹波哲郎が担当。

特筆したいのは山下が本作で任侠映画のスター鶴田浩二、そして時代劇映画のスター萬屋錦之介という恩人2人をキャスティングしたこと。(錦ちゃん変なメガネ)
奇しくも本作は鶴田の遺作となったわけですが、
彼をしっかり任侠スターとして終わらせた山下は東映最愛の功労者。

いよいよ今週末は東映やくざ映画の原点回帰と吟われる『孤狼の血』が公開されるということで、どんな広島ヤクザが観られるのかお手並み拝見です。
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