こたつむり

冬の嵐のこたつむりのレビュー・感想・評価

冬の嵐(1987年製作の映画)
3.2
♪ 凍えそうな季節に君は
  愛をどーこー云うの?

サスペンスの世界は日進月歩。
イマドキ、血や内臓が飛び散っただけでは話題になりません。昨日の刺激は今日の常識なのです。

だから、リメイクって難しいですよね。
新しい“何か”を付け加えなければ新規の興味を惹くことが出来ないし、アレンジしすぎると往年のファンからブーイングされちゃうのです。

そして、本作も同じ悩みを抱えたのでしょう。
1945年の『私の名前はジュリア・ロス』のリメイクなんですが、全体的に“まったり”としたテンポ。バブルで浮かれていた80年代の作品とは思えません。

それでも一応、サスペンスですからね。
端的に言えば「売れない女優に舞い込んできた仕事…それはいったい?」という物語なんで、違和感が違和感を積み重ねていく…なんて演出は冴えています。

でも、あまり怖くないんですよ。
悪役になるべき人が悪役っぽくないんです。しかも手際が悪いんです。どれもこれもが隙があり過ぎて、思わず「これはコメディなのかな」と呟いてしまうほど。“まったり”としたテンポと相俟って、なかなか盛り上がりません。

それと、旧作だから先読み可能。
登場人物も少ないため、起承転結の「転」が「転」になっていないんです。また、折角の寒々しい雰囲気も活かすことが出来ていないので、自然と瞼が落ちてきちゃうんですよね。

唯一の見どころは、主演女優の一人三役。
それを活かしたトリック(らしきもの)もあるので、そこにググっと来るかが分水嶺でしょう。但し、期待値低め、もしくはサスペンス初心者ならば…という条件付きではありますが。

まあ、そんなわけで。
無難にまとまり過ぎて、可でも不可でもないサスペンス。タイトルからして凡庸ですからね。“発掘”するような気持ちで臨むことをオススメします(勿論、お宝が出てこない可能性の方が高いですけど)。
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