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コントロールのNMのレビュー・感想・評価

コントロール(2007年製作の映画)
3.6
ただの伝記映画でも音楽映画でも終わっていない。人間の生と死についてとても良く描かれている作品。
自死を扱うので精神が健康なときに観ることをおすすめ。


音楽好きなイアン青年。
クールなようでもあるが、若さゆえかいつでも無性に衝動が湧き上がってくる。

一目惚れした女性に程なく求婚。
ボーカルとして参加しているバンドの目処が立ったところで、子どもを作ろうと提案。

と同時に一躍スターダムにのし上がっていく。
人々は熱狂するが、イアンは徐々に自分の人生がコントロールできなくなっていき、様々な要因に翻弄されてしまう。

そんなとき出会った美人と浮気。
長年支えてくれた妻と幼い子どもを簡単には捨てられない。しかし家に帰ってみるとやはりそこに居る気になれない。二人の間で板挟みになる。

そして彼はてんかんを患っており、パフォーマンス中に発作が起こって客や彼女に見られたらどうしようという恐怖もある。てんかん治療とは処方された薬を飲み続け発作をコントロールしていくのが主流らしい。どの薬が合うのか試行錯誤していかなければならない。イアンは医師に副作用について質問していることから、単に服用といってもそう簡単なことではなかったのかもしれない。実際その後服用していない。効くとも治せるとも思っていないのだろう。

俺はどうしたら良いのか。人として最低なのではないか。
このままバンドを続けていれば幸せになれるとでもいうのか。
分からない。こんなはずじゃなかったのに。涙が出てくる。俺に生きる資格はあるのか。一体どうやって生きていけば良いのか……。


もちろん自死も浮気も良くないと思う。
はじめは妻子を放っておいて適当人間だなと思って見ていたが、自分の感情にどうしても嘘が付けず、世界的成功を目の前にしても自己肯定感が持てず、むしろ絶望の底に陥ってしまった彼に正直言って少し同情を覚えた。
ワルにもなりきれず、真面目な人生も選べず、約束されたスター街道も上手く歩けず、選択肢がなくなったのだろう。

本人を知らない人たちからは、将来の成功は約束され、帰りをずっと待ってくれる家庭もあり、さらに遊ぶ女性もおり、人生を楽しんでいるように見えたかもしれない。
しかし本人としては八方塞がり。なんとも複雑な事態。
いかにも不幸な人だけが自死を選ぶとは限らないと改めて思い知らされた。
そして知りもしない他人をあまり勝手に羨んだり憧れたり嫉妬したりするのも良くないことだと再認識。その人の幸不幸はその人しか知らない。

赤ん坊を抱え泣き叫ぶデビーが胸を打った。
後年妻が書いた回想が作品のもと。
妻とすれば浮気はされるわ、自責して死なれるわ、彼女の方もイアンに負けず劣らず大変な人生。
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