Mou

リプリーのMouのネタバレレビュー・内容・結末

リプリー(1999年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

初めに、どちらも魅力がありどちらが優れているだとかを言うつもりはない。この上ない美貌のアランドロンと映像の美しさを見るなら「太陽がいっぱい」だし、惹き込まれる程演技力のあるマットデイモンによる愛を求めるトムを見たいなら「リプリー」。「太陽がいっぱい」よりも原作に忠実なリメイクがあると聞いて軽い気持ちで見ると、いい意味で騙される感じがした。「太陽がいっぱい」のラストに比べて、少々納得のいかない結末となっておりその点であまり良い感想を見かけないけれど、個人的にはこちらの方の締め方がトムの生涯苛まれ続けるだろう罪悪感と孤独を表しているようで好み。アラン・ドロンよりも地味な第一印象を受けるマット・デイモンの方がトムらしいとも思う。トムの劣等感や辻褄合わせの為に咄嗟に嘘をついてしまう様子は、正直共感も理解も出来た。だからこそトムの紙一重の危うさをひしひし感じ、非常に満足のいく視聴ができた。

「リプリー」では愛を拒絶されて始まった咄嗟の嘘の積み重ねと衝動的な殺人そして絶望の愛で終わる、一方「太陽がいっぱい」では嫉妬と憎しみから計画的な殺人を起こし幸福を噛み締めながらラスト(直前)を迎える、これが1番の違いだと思う。それからリプリーの方が同性愛色が強め。この作品の何よりの魅力はハラハラとスリルを感じられる殺人衝動に駆られている様子やトムの心情の変化を繊細に表現するマット・デイモンの演技ではないかと思う。思わずトムに肩入れしてしまう程繊細に上手く演じていることで、一見無理のある嘘の繰り返し、嘘を隠すために嘘をつく、そんなオーソドックスな展開も危うさが楽しめるようになっている、と思う。何より最後の殺人の哀れで悲しいトムの姿は強く心を動かされた。


彫刻みたいな美しさのジュード・ロウも最高。
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