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リプリーのsheeRのネタバレレビュー・内容・結末

リプリー(1999年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ドラマ版を観る前に視聴。自己同一性や自己認識に関するidentity crisisを描いたサイコサスペンスもの。『太陽がいっぱい』のリメイクで今作は原作により忠実とのこと。
1960年の『太陽がいっぱい』を観た時に、これは元々同性愛の話だというのを見かけてピンとこなかったが、リメイク版の方はしっかりそういった描写があって納得した。保守的な考えが根強いカトリック社会のイタリアで同性愛描写がタブー視されていたことを考えると、『太陽がいっぱい』の時代で同性愛描写を描くことは難しかったのかな。

人間の深層心理や闇に焦点を当てた話に光と影での映像表現、余白で心情を想像させるような演出に音楽シーンを多く取り入れていて、映画として観るならこちらの方が飽きずに観れて好みだった。自分ではない他の何者かになりたい欲求みたいなものは『ある男』に通じるものがある。
美しい海や街中を映すカメラワーク、ヒロイン役は太陽がいっぱいの方が魅力的に感じた。結末が違うだけにそれぞれの良さがあるので比較して観るのも面白い。

なんといってもMatt DamonにJude Law, Cate Blanchettという名キャストがやっぱり魅力的。美青年という容姿的にAlain Delonの役はJude Lawだと思っていたのでまさかの役でそこは意外だった。

偽りの自分を肯定されてもそこに満たされるものは存在しないし、自分を曝け出して拒絶されたら誰だって傷つく。傍から見れば気持ち悪くて許されない犯罪物語だけど、私は主人公の抱えている孤独に目がいってしまって同情しそうになったな。。
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