コザカナカルシウム

四月物語のコザカナカルシウムのレビュー・感想・評価

四月物語(1998年製作の映画)
3.5
「松たか子」の「松たか子」による「松たか子」のための映画だ。

この映画が公開された当時、岩井俊二は日本映画好き大学生だった私には神で、打ち上げ花火・フライドドラゴンフィッシュ・スワローテイル、そしてこの四月物語も映画館で観た。ひっさしぶりに四度目の鑑賞。

光の魔術師である岩井俊二の映画は内容ではない。観ているだけで眩暈を覚えるほどの切なさに襲われる。それはまるで3月に一級河川の水面に反射する光をみて、その光量に春の訪れを感じ眩暈を覚える感覚だ。「命、売ります」の羽仁男のごと、それだけで死にたくなる。光に圧倒される。

どのシーンもキレイなんだけど、一番好きなのは川原で松たか子がしゃがんでいるシーンだ。ワンピースの水色と草の黄緑の対比、光の反射具合、風になびく黒髪…文句なしの百点!(次点は雨の中、赤い傘をさしているシーン)

内容は、高校時代の先輩に憧れた松たか子が先輩を追って同じ大学に入学し再会する話だ。淡い映像や松たか子のかわいさ、キュンとした感情で隠れているものの冷静にみるとストーカーだ(笑)

大学入学初日、教室で自己紹介をするとき同時に話し出すシーンや、憧れの先輩が「武蔵野大学」に行ったことで「武蔵野」という言葉まで特別になるエピソードなど、細かい部分の「あるある」も上手だなぁと思う。

映画の公開当時、岩井俊二が松たか子「空の鏡」のミュージックビデオも作った。この映画のシーンも挿入されている。見直してみて驚いたんだけど、「空の鏡」って坂元裕二作詞だったんだね!好きな歌だったから妙に納得してしまった。