シンタロー

鳩の翼のシンタローのレビュー・感想・評価

鳩の翼(1997年製作の映画)
4.0
ヘンリー・ジェイムズの同名小説をヘレナ・ボナム・カーター主演で映画化。前半の舞台はロンドン。ケイトは落ちぶれた中流階級の娘。父は前科のあるアヘン中毒者…母の金を食い潰し、失意の中母は死去…ケイトは母の姉、伯母のモードに引き取られる。ジャーナリストの恋人マートンから求婚されているが「母親と同じ過ちは犯さないで!また会うならあなたも父親も面倒みないわ」と、伯母は猛反対。失意の中、知りあったアメリカ人女性ミリーは、莫大な財産を相続した孤児で、実は重病を患い余命幾ばくもない。ケイトとマートンが恋人同士であることを知らないミリーは、マートンに一目惚れ。親しくなるにつれ、ミリーの想いに気づいたケイトはある考えに至る。舞台は後半のヴェニスへ…。
三角関係を描いたラブストーリーとしては異色な作品。ケイトが財産も棄てて、マートンとの結婚を選べば済むことなのですが、父に言われた「金無しで愛が続くのか」に悩み、伯母に援助されてる父を見捨てることもできない。「同情は吹っ飛んだわ」と、マートンとミリーをくっつけて財産をふんだくろうとするものの、嫉妬に狂い破壊的な行動をしてしまうケイト。こんなに悲しく愚かな役、かなり難しかったと思います。ヘレナ・ボナム・カーターは見事な演技で、それまでの優等生な貴族娘キャラから脱却。以降、バイプレイヤーとしても幅広い役をこなすようになります。「司祭」「この森で、天使はバスを降りた」でそれぞれ注目されたライナス・ローチとアリソン・エリオットも好演。なぜか二人共映画界での活動は地味になってしまいましたが…。タイトルの「鳩の翼」は、マートンがミリーを表現した言葉、[彼女は生きている。誰よりも生き生きと。]を意味しているように感じました。終盤のこんなに惨めで憐れなラブシーンは初めて…忘れられない。
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