Shiro

沈まぬ太陽のShiroのレビュー・感想・評価

沈まぬ太陽(2009年製作の映画)
3.6
震災後に御巣鷹の遺族と交流を続けている閖上の遺族がいるという記事を読んだことがあった。「自分よりずっと前を走っている人がいる」と彼女は思った。震災の26年前。やはり同じように生き残った自分を責め続けた人がいた。どうしてあの時…と。
香川照之が好演だった。彼の演技で雰囲気により抑揚が出た感じ。全体を通して、父さんは逃げなかったと息子に言われ、ありがとうと返しながら家族でソバをすするシーンがよかった。ただ、逃げないことが、それは固執とも表現できるけど、美徳とされた時代は終わりつつあるようにも思える。東大法学部を出てナショナルフラッグキャリアに入り、社内政治に翻弄されながら、アフリカの沈まぬ太陽に己の小ささを励まされる。
そういう時代からは髄分と時間がたった。波に乗る人、逆らう人。乗り続ける必死さ。ドロップアウトする気楽さ。今では好き好んでアフリカを旅する日本の若者たち。自分もそういう願望を持つ1人に違いない。
原作は山崎豊子。一人の人物の人生から、社会や時代のひずみを描く手法を確立したと思う。白い巨塔を思い出した。
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