けーはち

沈まぬ太陽のけーはちのレビュー・感想・評価

沈まぬ太陽(2009年製作の映画)
3.5
組合のリーダーで労働争議後の報復人事を受けて途上国に左遷され、日本に戻った時には会社が未曾有の大事故を起こしていた航空会社の社員の人生を描く山崎豊子原作のお仕事ドラマ。主人公の渡辺謙は本当に大変な境遇を耐え忍び抜いたが、それは戦後の混乱を経て高度経済成長期の日本に、東西緊張が高まる世界情勢下、学生運動や労働争議も盛んに行われて、人間の志で明日は如何様にでも変わる、きっと努力次第で良い方向に導ける、そう希望を抱けたからなのかもしれない。もはや今日より明日が良くなる保証がない時代に耐える意味もなく、酷い待遇ならサッと会社を辞めるべき、そんな今の日本人には本作の美徳とされる価値観は何ともノスタルジックに思える。スケールが大きく尺も長大になってしまっているが、見応え充分、ある意味では歴史大河のようなタッチの作品。