ふき

レスリー・ニールセンの ドラキュラのふきのレビュー・感想・評価

4.0
ブラム・ストーカー氏の原作『吸血鬼ドラキュラ』の一九三一年の映画版である『魔人ドラキュラ』をベースとした、パロディ作品。

レスリー・ニールセン氏が演じるドラキュラは、髪こそ白髪でベラ・ルゴシ氏のイメージとは大きく異なるが、立ち振る舞いや表情や喋り方を似せているカットが要所要所にあることで、思ったより似ている印象を受ける。また、一九五八年のクリストファー・リー版や一九九二年のゲイリー・オールドマン版を取り入れる折衷感覚も興味深い。結末を一九二二年のマックス・シュレック版に寄せてきたのは、本作のキャラクター性を考えれば適切なところだろう。
対するヴァン・ヘルシングは、監督であるメル・ブルックス氏が演じており、エドワード・ヴァン・スローン氏を意識しているのか判断しかねる、いつも通りの不謹慎爆発演技だ。そりゃ監督だから血の噴出し方は知ってるだろうよな! 一八九三年にその本はねえだろ!
『魔人ドラキュラ』をベースにしているだけあって、レンフィールドの役柄も大きい。演じたピーター・マクニコル氏は、好青年と狂人の二面性を演じたドワイト・フライに髪型や雰囲気が似ていて、想像以上にレンフィールドをしている。役に立たないところも含めて。
スティーヴン・ウェバー氏演じるジョナサン・ハーカーは、デヴィッド・マナーズ氏というより、『ノスフェラトゥ』で同役柄を演じたグスタフ・フォン・ヴァンゲンハイム氏に近いか。役立たずと底抜けなバカの中間みたいなニュアンスが。

とはいえお話は様々な人々が『ドラキュラ』として描いてきた“事実”をちゃんと再現しているし、登場人物の演技も真面目だから、笑いだけでなくホラーも悲劇もしっかり立っていて、作品としての満足度は高い。日光に憧れているドラキュラとか、その場で対処法を探るヴァン・ヘルシングとか、「あったかもしれない『ドラキュラ』」の一作としても、十分に楽しめるだろう。
いや、まあ、鏡で吸血鬼であることがバレるシークエンスとか、ミーナに屋外に出てくるよう命令するシークエンスとかは、監督の頭を覗いてみたくなるというか、「え……ヴァカなの?」と口走ってしまったというか、最高すぎてお腹痛かったです、はい。
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