唯

雨のしのび逢いの唯のレビュー・感想・評価

雨のしのび逢い(1960年製作の映画)
3.5
不倫からの痴情のもつれで起きた殺人事件に情熱を見出し、猟奇的なまでに残虐性を持って愛されてみたいと夢想する。
極限まで台詞を減らし、言外の部分で通じ合おうともがく二人。距離が近過ぎて左右の目を交互に見つめる辺りが好きだなあ。
手のかかる子供という存在を抱え、母や妻という顔を持ちながらも一生の恋に憧れてしまう。
人生の目的や生きる意味を教えてくれるというか、存在が目的や意味そのものである、そんな人と出逢えたらとは誰もが思ってしまうよね。
思い通りに育ってくれない子供、贅沢ではあるけれど愛のない家庭生活。そこに対するフラストレーションが恋へと突き動かす。
殺人に至った許されぬ恋人達と自分達を重ねて夢想しては、どうにもならない現実に生きる自分を慰める。
死を持って想いを成就させることを望んでいたのだろうが、それさえも許されずに夫の迎えに来た車で家路に着く。それが人生。平凡な幸せという無情。
唯