シズヲ

スーパーマリオ/魔界帝国の女神のシズヲのレビュー・感想・評価

3.3
これが『劇場版スーパーマリオブラザーズ』だァァ〜〜!!アニメ映画が大ヒットを記録したことでどういう訳か再注目された実写版マリオ。アニメ版よりも兄弟で冒険していないか?“マリオブラザーズは配管工であり、時に地下を舞台に活躍する”という原作要素から繋げたと思わしき“生き残った恐竜の子孫が潜む地下帝国”なる世界観、ある意味で脱帽させられる。マリオの映画を見に来たのに、冒頭から未知の恐竜真実を突き付けられることになるのだ。

本作は“マリオの映画”という看板に対する我々の想像力を軽く飛び越えてくるようなアイデアに満ちている。“デニス・ホッパーが演じる恐竜帝国の支配者クッパ”という設定の時点で既に未知の領域。もはやグロテスクな造形になっているクリボー(グンバ)やキノコ要素、無駄にリアルすぎるヨッシー、ディストピア的な舞台設定など、全く以て予想の斜め上を行くビジュアルが飛び交う。カーチェイスなどのアクションや地下帝国の絵面、更には全編に渡って漂うユーモアも含めて、80~90年代のB級娯楽作のテイストが強い。度々飛び出してくるガジェットには楽しさがあるので、もうちょっと前面に押し出してくれても良かった。

この映画のマリオブラザーズは“身寄りのないルイージをマリオが親代わりに育てた義理の家族”という微妙に回りくどい設定になっている。ボブ・ホスキンス演じるマリオも大分おっさんな風体なので、兄弟というよりかは気の置けない疑似親子っぽく見える。彼らの軽妙な仲良しぶりは微笑ましいが、映画終盤まではマリオが緑の服でルイージが赤い服を纏っているちぐはぐさに趣を感じる。そして若いルイージがロマンス役を担っていることに合わせてか、ヒロインはまさかのデイジーである。ピーチはいないけどポリーンはいる。それと漫才じみた掛け合いを繰り返すイギーとスパイク、カートゥーンめいた愛嬌があってしょうもないけど嫌いになれない。

原作とはとても掛け離れた珍味だが、それだけに良くも悪くも予想のつかない新鮮(奇抜?)なアイデアに溢れている。クッパの支配する地下帝国はその退廃的ビジュアルも相俟って半ばサイバーパンクの領域。原作と乖離した要素の数々も、実写映像への落とし込み方が異様すぎるのである意味刺激的。ブルックリンでワゴンに乗って活動する絵面や、終盤における現実世界への転移などは、後年のアニメ版をちょっと想起させられる。あと工具を駆使して危機を切り抜ける場面が度々あったり、何やかんや言って“マリオ達が配管工であること”をアクションに組み込もうとしている誠実さが憎めない。

とにか変な方向性で原作からズレまくってる(ボム兵だけは謎に再現度が高い)ズッコケぶりとか、要所要所で拭い切れないグダグダ感とか、何だかんだ言いつつもキワモノや珍作の類いであることは間違いない。それでも本作の持つ未知の想像性は何だか憎みきれないところがある。実際に子供が楽しめるかどうかは定かではないが……。ラストバトルでついでの如く雑に始末されるスカペリに笑う。
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