Kamiyo

忍ぶ川のKamiyoのレビュー・感想・評価

忍ぶ川(1972年製作の映画)
4.0
1972年”忍ぶ川” 監督 熊井啓

50年前に初めて見ました、福岡の宝塚会館で、僕は”コマキスト”
当時は”サユリスト”もあり僕らの上の世代が多く
有名な芸能人は”タモリ”です
ただただ,,栗原小巻の美しさに圧倒された。
再見です。。小巻は本当に美しい
この作品で「コマキスト」という言葉が生まれたことを
初めて知りました

三浦哲郎の同名の芥川賞受賞作が原作。
熊井啓監督が、構想7年、何度も企画が流れ
日活を退社してフリーとなって東宝で製作した。

主人公の大学生の哲郎(加藤剛)は三浦がモデルで、兄姉がそろって自殺・失踪という呪われた家。
「忍ぶ川」という深川の小料理屋の志乃(栗原小巻)と恋仲になるが、彼女も洲崎遊郭の射的屋の娘で、病気の父がいるという
双方暗い家庭事情を持つカップル。
まるで小説を読んでいるような心地よい展開。
哲郎と志乃の二人だけの映画みたい。
残りの人たちは背景。美しい風景と同時に二人の愛
生きると言うこと、幸せと言うことを情感豊かに丁寧に描写。
それでいてダレることの無い緊張感。

テーマは志乃の父親(信欣三) が言う「結婚なんてものはなぁ。死ぬほど惚れた相手ができたら、さっさとするのが一番いいんだ」
不幸な星の下に生まれた二人にふさわしい言葉。
同じく「滅びの血、不幸の血」という宿命論にも似たセリフが出てくるが、それらを乗り越えて生きようとする二人がよく描けている。

栗原小巻の演じる志乃。理想的な女性ですね。
木場の桟橋で恋人の前で静かに合掌する。
性格を決定づけています。こんないい人っていないですよ普通。
結婚式で久しぶりに家族らしさが帰ってくる場面
そして最後に窓から自分の家だとはしゃぐ志乃。
洲崎を離れて11歳の頃から自分の家が無かったという境遇を考えると、泣けてくるくらいの幸福感です。
とにかく、純愛と幸福が詰まっていました。

初夜のシーンで、栗原小巻の乳首までさらけ出す心意気が伝わる。
二人を人形と人形使いに例えた静謐な初夜のラブシーンの
素晴らしさには圧倒された。
ふたりは初夜の床で遠く静けさのなかから聞こえてくる
馬橇(ばそり)の鈴の音を耳にする。
その音はまるでふたりの門出を祝福するかのような
穏やかで美しい響きである。
ふたりは裸のまま一枚の丹前にくるまって
部屋をぬけ、雪のなかを走る馬橇(ばそり)の影を眺める。
それはまるで死の影が遠ざかって行くかのようであり
また若いふたりの生命の讃歌を奏でているかのようでもある。

翌朝、新婚旅行に向かう汽車の窓から男の実家を見つけた女が
”あたしのうち”と連呼する場面もいい。
長い間我が家とは縁の遠かった女にやっと帰る場所が出来たのである。
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