うめ

ウォーク・ザ・ライン/君につづく道のうめのレビュー・感想・評価

3.5
 アカデミー賞関連作、鑑賞その14。今作ではリース・ウィザースプーンが第78回アカデミー賞で主演女優賞を獲得している。

 1950年代からカントリー歌手として活動し始めたジョニー・キャッシュの半生を、彼と共に活動した女性歌手ジューン・カーターとの関係に焦点を当てて描いている今作。そのため、ラブストーリーの趣きもあるが、私はどちらかというと、今作を「ジョニー・キャッシュの過去の克服と復活の物語」として捉えたい。ラブストーリーとして観た場合、ジョニーとジューンの感情の変化や言動の意図が少し把握しづらいため、疑問が残るばかりだが、ジョニー・キャッシュの物語として捉えれば、十分面白い作品だ。(よって、邦題の「君につづく道」も不要だと考える。)

 ジョニー・キャッシュは冒頭の描写にもあるように、幼い頃自分のちょっとしたミスで兄ジャックを亡くし、その罪悪感が拭いきれずにいる。また夫婦関係もうまくいかないこともあって、次第に酒と薬物に溺れていく。そこで手を差し伸べたのがジューンである。ウォーク・ザ・ライン、つまりまっすぐ歩けるように、音楽の道をまっすぐ歩けるように、ジョニーのふらつく足取りを支えたのがジューンだったのだ。そのジューンの支えに応えるように、ジョニーはステージで歌う。歌唱シーンは全体的に良いが、(ラストではなく)終盤のあの舞台でのシーンはそうしたジョニーの遠回りした道、過去に対する苦しみ、半生を全て表しているようで素晴らしかった。(ちなみに、ウォーク・ザ・ラインというタイトルはラブストーリーの観点からすると、ジョニーとジューンの間にある微妙な距離(ライン=境界線)を示しているのではないかなと思います、たぶん。)

 今作はリース・ウィザースプーンが受賞したけれど、私はホアキン・フェニックスの演技を推したい。ギターの弾き方はジョニーによく似ているし、顔も若い頃のジョニーの雰囲気と似ている。だが、それ以上にやはりもがき苦しむ演技が見事。ホアキン・フェニックスって、表に出す感情の裏に違う感情が隠れているんじゃないかと思わせる表情や演技をしてくるから興味深い。今作はそうしたホアキン・フェニックスの演技を堪能できる作品だ。

 伝記映画としてはありきたりな部分もあるし、構成にもっと工夫が欲しかったところだが、ジョニーが作った音楽と共にその半生を知ることができたのは、いい機会だった。
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