izu

シュウシュウの季節のizuのレビュー・感想・評価

シュウシュウの季節(1998年製作の映画)
4.1
あの日が、少女時代最後の日でした。

1975年、中国四川省成都市に住む少女・ウェンシュウ。シュウシュウというあだ名で呼ばれる彼女は、下放政策により街から離れた草原で現地の中年男性ラオジンと遊牧をして日々を過ごす事になる。最初は無口で無骨な彼だったが、次第に打ち解けていく。しかし、下放の期間を過ぎてもシュウシュウの元には迎えが来ず、金もコネもない彼女は「本部につてがある」と言う青年に言い寄られ身体を許してしまったことから、男達にコネを求めて身体を売り始めるようになる...

’’お金もない。コネもない。本部から忘れ去られた私にあるのはこの体だけ...’’

ジャンルとしては胸糞映画なんだけど、これは完全に埋もれてしまっているなぁ...
この映画はただただ胸糞というわけでもなく、登場人物に色々と思う事があった。重要な人物は主人公のシュウシュウと、共に過ごす事になるラオジンなんだけどこのラオジンがとってもとっても良い役でたまらなかった。

主にこの2人がドラマがメインとなり、ただただ素敵な、迎えが来るといいね~なハッピー物語だったのに男が来てからは一気に崩れていく。
ここまでのドラマが本当に濃密で、じっくりじっくり描いていく。次第に2人は親子のようにさえ思えた。シュウシュウもラオジンの事が好きだったと思うし、ラオジンもシュウシュウの事が好きだったと思う。
シュウシュウはこの生活にどんどん慣れていくが、帰りたい気持ちは確かにあった。

男の第一印象は良かったものの、結局は体目的な野郎でシュウシュウの純潔が穢されていく光景は見ていて耐え難い。以降、体を売り続け徐々にやつれ、元気が無くなっていくシュウシュウ。それを見ているラオジン。私はこの2人が好きで、ただただハッピーなままシュウシュウがハッピーに帰り、定期的にラオジンに会いにくるみたいなハッピー物語を少し望んでしまっていたからこそ見ていて辛かった。そんなことがあるわけない。何もできず、ただ見ているだけ、見ていることしかできないラオジン、ただただ堕ちていくシュウシュウ...

胸糞悪いもの確かだけど、悲しさ、切なさもあるとても余韻の残る映画でした。
どちらかと言えばラオジン推しなので、本当にただただ見ていることしかできない彼を見ているのが辛かった。というかシュウシュウもそうだけどラオジンもまぁまぁ被害者な気がする。こんな想いしたくないってぇ...

視聴 2023年10月13日
izu

izu