ハンスウ

終着駅のハンスウのレビュー・感想・評価

終着駅(1953年製作の映画)
4.2
メロドラマです。巨匠の有名な作品で、私は昔通ってたVHSビデオ時代のレンタルビデオ屋でしょっちゅうこの映画のビデオソフトの背表紙を見かけてましたが、とうとう手に取ることもなく、その後はすっかり忘れていた映画でしたが、クラッシックなメロドラマを観る気マンマンな今の機会に観てみました。

ヴィットリオ・デ・シーカ監督がハリウッドの大物プロデューサーに呼ばれて作られたそうですが、広大なローマの駅構内を舞台にドラマが描かれるんですけど、エキストラの人数とか、本物の駅なのかセットなのかわからないけどイタリア人監督の作品にハリウッドマネーが投入されて実現した映画と言えるでしょう。しかし、本作はイタリアバージョンとアメリカバージョンがあるらしく、アメリカバージョンはズタズタにカットされたヒドいものらしいですね。私がアマプラで観たのは時間の長さからしてたぶんイタリアバージョンだと思います。

1953年に公開されたそうですが、同じローマを舞台にした「ローマの休日」も同じ頃に公開されてるんですよね。あっちはとにかく楽しくてロマンチックでちょっと切ないラブストーリーでしたけど、こっちの「終着駅」は無様でみっともなく往生際の悪いラブストーリーなんですよ。ラブストーリーといっても今やSNSで猛バッシングの対象となる「不倫」です。1950年代当時の観客はどうだったんでしょうね。浮気の一つや二つくらい、っていう時代だったかもしれないですね。だから今ほど嫌悪の目で見ることはなかったのかもしれないですね。どうかな……。

駅構内をですね、あっちこっちウロウロしながら男女がああでもない、こうでもない、と、それだけなんですよね。それだけのにその行く末が気になって仕方ないというふうに思わされる。ネオリアリズムを牽引していた巨匠だけに男女の切実な会話劇をリアルに演出しています。また、目を引くのがですね、その構内の人々なんですよね。エキストラなのか脇役さんなのかわからないくらいですが、さまざまな人々が配置されていて、まるでミュージカルのダンサーのように役割を果たしているんです。なぜそんな演出ができるのか、本物の駅で人を止めて撮影したのか、または巨大セットでじっくり撮影したのかわからないですけど、主役の2人を引き立てる装置のようでもあったと思います。

ヒロインのジェニファー・ジョーンズはちょっと老けて見えるから彫刻のような整った顔立ちのイケメン、モンゴメリー・クリフトがホレるという設定に無理があるように最初は思ってしまったんだけど、このジェニファーさんは演技が上手なんですよね。本作でやってたのは結構芝居がかった演技でしたけどグラグラ揺れっぱなしでなかなかキッパリ決心ができないという心情を目も当てられないくらいに、わかりやすく演じていました。一方のモンゴメリーはもう無様でみっともなくカッコ悪い。イケメンが形無しっていうくらいの役を地道に、でも、映画としては見事なくらいの成れの果てを演じて役割を果たしていたと思います。
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