法廷ミステリーの佳品です。
『シャイン』『幸せのレシピ』のスコット・ヒックス監督作品。
デイヴィッドッド・グターソンのベストセラー『殺人容疑』の映画化です。
日本人として、切なくなる物語でもあります。
この作品も、情報の雪に埋もれかかっている名作。
1950年代初期、ワシントン州サン・ピエドロ島が舞台。
第二次世界大戦後まもない当時、サン・ピエドロ島でも日系アメリカ人に対する根強い人種偏見が残っていた。
ある日、島の漁師が水死体で発見される。
状況証拠から、日系二世のカズオ・ミヤモトが逮捕された。
主人公の新聞記者イシュマエルは、カズオの裁判の行方を追うも、葛藤を抱えている。
ミヤモトの妻ハツエと主人公は、ヒマラヤ杉の森で、かつて秘密の愛を育んだ仲だった。
しかし、太平洋戦争が2人を引き裂き、ハツエはカズオと結婚した。
イシュマエルも戦争で片腕を失っていた。
主人公は、ハツエを想い続けていると同時に、主人公の帰還を待ってくれなかったハツエに恨みを抱いている。
日系人に対する差別が渦巻く法廷で、カズオは追いついめられていく。
イシュマエルは取材を進めるうちに、カズオの容疑を晴らす証拠を掴むことができた。
しかし、半ば自暴自棄になっているイシュマエルの心に邪な感情が芽生えていなくもない。
カズオがいなくなればハツエとの仲が復活するかもしれない。
それがうまくいかなくても、島の住民の同調圧力を背にして、ハツエと日本に恨みを晴らせるだろう。
良心と過去の傷の間で、イシュマエルが下した決断とは?
「偏見や憎しみ、それが愛だとしても、執着を手放すのは難しい。絶つためには生まれ変わらねばならない」と、主人公は老弁護士より助言を受けました。
被害感情に苛まれ、ダークな感情に支配されている時に、どれくらいの人が利他的に行動できるでしょうか。
当時、老弁護士の言葉が刺さりました。
聞く人にとってはなんのこっちゃという言葉かもしれません。
イシュマエルが、降りしきる雪のなか去っていく姿が哀愁を誘います。
主演のイーサン・ホークがかっこよかった。
ハツエ役の工藤夕貴、ハツエの少女期を演じた鈴木杏も素敵でした。