ちゃんゆい

わが青春に悔なしのちゃんゆいのレビュー・感想・評価

わが青春に悔なし(1946年製作の映画)
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人生の使命はなにか。
それを本能的に知っている人間と、見えぬまま行動した先で悟る人間がいる。

自分には為すべきことがあると突き進む人間の背中は潔く、つい羨望の眼差しを向けてしまう。しかし、当人からすれば「憧れを進んでいる」という意識はなく、自分の選択に自分で責任を持つことの苦しみや、他者からの眼差しが常について回る。

それでも行動するのはなぜか。
「私の行動は10年後にようやく結果が出る」
それは、現在の苦しみに対する言い聞かせであり、限りなく自分を信じる強さでもある。

悔いのない選択はなにか、自分の直感は知っている。今現在、まわりを囲んでいるひとや環境という枠に判断させられるのではなく、進めと叫ぶ心の声に従うことは、少なくとも自分にとって「悔いなし」と言い切ることができる生き方だ。

野毛も、その生き様に魅せられた幸枝も、「悔いなし」という表情をしていた。
苦労はあれど、心の声に従って行動したものだけができる表情だ。

年数の経ち方の表現が面白かった。
同じ行動を、格好を変えて、向かってくる角度を変えて定点で写す。
野毛の会社前で、ウィンドウの前を右往左往する幸枝のカットは良かった。目から鱗だった。季節が変わり、でもその"日"の感情は手に取るようにわかる。すごい。

原節子さん、農作のシーンがすごかった。表情には現れないものの、内側から溢れる熱と生命力。目力かな。心が震わされた。
最初の"お嬢さん"からの変貌が分かりやすく対比になってた。