ベビーパウダー山崎

友よ、風に抱かれてのベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

友よ、風に抱かれて(1987年製作の映画)
3.5
息子のように可愛がった青年が優れた兵士に「正しく」育ち、ベトナムに向かいあっけなく戦死する。撮影前にコッポラの息子が事故死していて、それでも撮り切るのが作家というか、その人生とシンクロしてしまうのが表現者の業。
葬式から始まり葬式で終わる映画。若者が戦争で死ぬまでの短い時間。冒頭の葬式で呆然としている妻のメアリー・スチュアート・マスターソンを映し、それから映画とともに彼彼女らの人生と付き合い、ラストの葬式で見せるメアリー・スチュアート・マスターソンの涙に一周して還ってくる。同じ葬式を映していても、こちら側の感情もまったく違ってくる。一線を退いた上官のジェームズ・カーンが親代わりにその若者をどれだけ愛したのが既に私たちも知っている、最後の言葉の重さにグッとくる。
間違った道だと分かっていても幸福ではないその道を愚かにも選んでしまうのが人間、人生はどうにもならない(なるようにしかならない)というコッポラの達観した視線。