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リバース・エッジのLATESHOWのレビュー・感想・評価

リバース・エッジ(1986年製作の映画)
3.9
本作にインスパイアされた岡崎京子の漫画を読んだことがある人なら、どういったストーリーなのかわかるかもしれませんが、どうしようもない虚無感に襲われてしまう映画である。
川岸の友達の死体を目にしても何の感情も浮かばない。殺した友達ですら。
まるで教室の机に置かれた花瓶だ。
TVドラマを見たら泣くのに友達が死んだら泣けなかった女の子。死体を見ても何も感じなかった自分にショックを受けるキアヌ。
誰一人死を悼み悲しまない。何もねえ、川しかねえ荒れた町でクサとビールとメタルとセックスと世界の終わりに取り憑かれ、死体を見た後で普通に登校する。
元「バイカー」だった義足のデニス・ホッパー。また町外れの奇人役だ。ダッチワイフを心の拠り所にする彼だけが、昔の自分と同じく女を殺した呑んだくれの無感情な姿に憐れみの目を浮かべる皮肉さ。
「きょう、友達が死んだんだ。可哀想なやつだったよ...」
悲しげに俯くデニス・ホッパー。
教師が嘆くほど皆無関心で誰一人葬式で泣かないラストとの対比。
身近な人の死すら何とも感じられなくなる日常って何だ。茶色い川の流れをボンヤリ眺めるのっぺりした日常が感情を殺すのか。
人を殺した実感のなさに対し向けられるデニス・ホッパーの憐れみの目と銃口。
幼い妹の手を引いて一緒にお人形の墓を作るキアヌすら葬式で涙が出なかった。
そのどうしようもない虚無感。

何かを隠すように、何かを麻痺させて生きていると
デニス・ホッパーは哀しげにこちらを見つめて無言で銃口を向けてくる。
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