こたつむり

害虫のこたつむりのレビュー・感想・評価

害虫(2002年製作の映画)
2.6
♪ 教室にワンちゃんは
  飛び込んでこなかったんだ
  退屈な青春に思い出はない

不安定な思春期女子を描いた作品。
いわゆる“定番”。子供から大人に変わるまでは長いようで短いもの。その“刹那”を捉えるのはクリエイターならば当然の話。

勿論、観客を不安定にさせたら成功。
そのためには極力“言葉”を排し、想像力に働きかけるのが吉。本作の場合、そのあたりは成功している部類なので、傑作と言えば傑作。

しかし、中途半端であるのも事実。
その原因は主人公の年齢設定。劇中では中学一年生…つまり13歳なのに、演じた宮崎あおいさんは当時17歳。頑張って幼くしても中学生には見えず。

それは、他の役者さんたちも同じ。
中学一年生と言えば、まだまだ小学生と地続き。“児童”の名残を高校生に求めるのは無理だと気付いていれば…中学三年生くらいに設定しておけば…なんて悔やんでも後の祭り。

また、徹底的に足りないのはエロティシズム。
まだまだ子供だと思っていたのに、その隙間から大人の色香が“ぷぅん”と漂うからこそ、未成熟の大人が惑うわけで、それを描かずに説得力が増すわけがなく。

確かに時代が許さない表現。
しかし、映画に出ている時点で“商売道具”になっているわけで、覚悟を以って臨むべきであり、無様な大人の姿を刻むのであれば、その対象を明確にするのは重要。

そもそもタイトルの『害虫』とは誰のことか。
まさか主人公と言うはずはないと思うが、もしかしたら、そうなのかもしれず、そして、そうだとするならば、それは身勝手な大人の論理。

劇中でベタを比喩に出したように。
人間自体が争いを繰り返す“害獣”。それを自覚せずに綺麗事を口にする大人こそが責任を取る存在であり、思春期の女子に擦り付けるのは如何なものか、と小一時間問い詰めたくなったのが結論。

まあ、そんなわけで。
可食部が少ない青春物語。
と言えば綺麗だけど、逆三角形のように常に不安定なので、ある程度心のゆとりがあるときに臨むが吉。下世話な気持ちで臨むのはオススメしません。
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