マコト

普通の人々のマコトのネタバレレビュー・内容・結末

普通の人々(1980年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

不慮の事故で長男を失いその罪悪感から心をやんでしまった次男と、その長男を深く愛してたが故に次男に辛く当たる母、それをなにもできずにいる父親 、三者三様の苦悩が紡ぐ1980年度のアカデミー賞作品賞を取った人間ドラマ。
紅葉に染まる街路樹や街並み、朝陽や夕陽、あまたに描かれてきたような理想的な中流アメリカ人家族、とこの映画の映像は絵のように美しい。だけど、その中はすでに壊れてしまっている。
特に、母と次男の関係は地獄そのものように殺伐としている。この映画まるで、仄かに甘いビターなケーキの中に神経性の猛毒が入っている、そう感じた。
終盤、次男が泣き崩れ掛かり付けのカウンセラーの元へいき、そこで心を吐き出して、彼は救われたように、見えるが、結局最後まで母は彼を愛してくれることはなく家を出ていく。父は、それをただなすすべもなく見送るだけ。妙に明るくなって父を励ます次男だけど、逆に次男も完全に壊れてしまっているような気がする。家族も跡形もなく砕けちって映画は終わる。
記録だけ見ると前年には、同じ家族の崩壊を描いた「クレイマー、クレイマー」が作品賞に輝いていて、二年連続でホームドラマというアカデミー賞の好みそうな作品だけど、この映画のラストは家族の絆に仄かな希望を残した「クレイマー、クレイマー」と違って、家族の絆は微塵もなく切られる。次男の狂気は何の説明もなく僕の感想に過ぎないかもしれないけど、最後まで彼が愛されないで終わるこのラストが、とてもハッピーエンドとは思えない。
こんな絶望的な作品に最高賞を与えたアカデミー賞ってセンス抜群だと思う。
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