シネラー

グリーンマイルのシネラーのレビュー・感想・評価

グリーンマイル(1999年製作の映画)
5.0
『ショーシャンクの空に』に続き、
午前十時の映画祭にて再鑑賞。
全編通して幾つもの場面で
泣いてしまう作品であり、
それ位に涙が出続けるマイベスト映画だ。

1935年アメリカ、
死刑囚監房で看守を務めるポールのもとに
大男で黒人の死刑囚ジョン・コーフィが
収監されるが、
病や傷を癒してしまう不思議な力を持つ
コーフィの奇跡を目の当たりしていく
ヒューマン・ファンタジーだが、
看守と囚人という関係性から巻き起こる
残酷な悲劇と人間讃歌が素晴らしかった。
穏やかで純粋な性格のコーフィと
その奇跡を目撃する看守達の関係が良く、
ポールの尿路感染症を治す事を皮切りに
刑務所内のネズミことMr.シングルスを
皆で可愛がるのは微笑ましい限りだ。
悪態をつく看守のパーシーはいるが、
ポールをはじめとする他の看守達は
温かい人間味を帯びている上に、
パーシーの脅しにも屈しない
したたかさもあるのが爽快だった。
病を完治したポールのその妻の
夜の営みに関しては、
直前でのトイレ内でのポールの表情から
笑えてしまう流れだ。
そんな死刑囚監房のイメージと反する
微笑ましさがあるからこそ、
結末へと進むにつれて
哀しさが込み上がる展開ではあった。
神の力を持つ無実の人間を
死刑にしなくてはならない葛藤をしながら、
コーフィに温かく接する
ポール達の優しい言葉や言動には、
救いの無い物語における僅かな優しさが
感じれる部分だった。
コーフィが最後に希望した事が
冒頭場面と繋がるのには涙腺が刺激され、
本作の2回目以降の鑑賞は
必ずその冒頭の時点で
泣いてしまうのだから秀逸な描写だと思う。

ファンタジー要素もある中、
人の善悪や人種差別に償いという
深みある人間模様も描かれるのが
本作の好きな要素の一つだ。
私自身は死刑廃止論者ではないが、
それでも劇中で凄惨な死刑執行を受ける
死刑囚デルの最期には涙が溢れ、
人の尊厳について考えさせられる場面だった。
個人的に本作は
ポールをはじめとする看守達が人間の善意、
パーシーや死刑囚ウォートンが人間の悪意
と捉えているのだが、
その中でコーフィは純粋であるが故に
どちらにも成り得る人物ではあると思った。
生命を救う力を持つコーフィだが、
終盤で人を間接的に殺めているのも
事実ではあるだろう。
コーフィは世界中の苦しみを聞いたり
感じたりする事に疲れたと言って
死刑判決を受け入れていたが、
彼は殺人に対する償いの想いと
自身も人の悪意の染まり得る恐怖から
死刑を甘んじて受け入れたように
感じられる決断だった。

3時間という長時間の映画ながらも
全くの間延びも感じさせない、
微笑ましくて哀しいファンタジー映画だ。
劇場鑑賞できた事に感謝しかないが、
涙で映像が直視できないじゃないか。
全編通しての鑑賞で5回は涙が溢れてしまう。
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