ユペールの演技を堪能するサスペンス。ずっと何を考えてるのかわからないユペ様の演技が素晴らしい。一人勝ちです。あらすじを読んでも面白さは伝わらないヤツ。
ユペールが悪女になる。ユペ様演じる主人公ミカは養女として育てられ、本当の両親がいなくて自己肯定感がないのだと思う。愛されたいし、独り占めしたいし、嫉妬心が強い。親から継いだ会社の社長を務め、金はあるが好きな人を手に入れても、孤独感とコンプレックスが癒えない。何よりも悪事を働いても罪の意識がないところが怖い。
リストの♪葬送曲♬が流れるラストの素晴らしい長回しは『君の名前で僕を呼んで』を彷彿させる。ユペールが蜘蛛の巣にかかった獲物のようにうずくまり、それが子宮の中の赤ちゃんを連想させて切なくなってしまった。満たされることのない女性の罪。最後は敗北だったのか、むしろ希望だったのか。面白かったです。
ココア、蜘蛛の巣のような編み物、リストの曲など、演出も見事でした。
原題『Merci pour le chocolat』=ココアをありがとう
