コマミー

異人たちとの夏のコマミーのレビュー・感想・評価

異人たちとの夏(1988年製作の映画)
3.9
【後悔から生まれるゴースト・ストーリー】



[気まぐれ映画レビューNo.178]





昨日から公開されている"アンドリュー・ヘイ監督による再映画化作品"の鑑賞に向け、この"大林宣彦監督版"を鑑賞する事にした。

本作は、テレビドラマの脚本家としても知られる"山田太一"が1987年に発表した同名小説を映画化したもので、日本アカデミー賞やブルーリボン賞など、数々の映画祭で高く評価された作品だ。妻子と別れて一人暮らししている寂しい中年男性"原田秀雄"が、幼い時に"死別"した"両親とそっくりな2人"と出会い、秀雄が"子供の頃のような不思議な日々"を過ごすと言う物語だ。

本作もハリウッド映画で言う「シックスセンス」のような"泣けるホラー"と言えるような演出が幾重にもあり、秀雄がいわゆる亡霊のような2人との対話や、間で登場する恋人:"ケイ"との経験を通して、自分を"見つめ直していく"と言う物語となっている。

本作は未鑑賞で、全く期待せずに見たのだが、中々良い作品であった。ホラーとノスタルジックなファンタジーを"行き来する"ような作りとなっていて、ホラーとしての怖さがある反面、それらの意味を知った瞬間、感動の涙も溢れてくる作品となっていたのが良かった。
そして本作は霊との交信としてではなく、異人…いわゆる"知人のような別人"との交流を描いていたのも面白かった。幻と一括りにしないのも、優しさがあっていい。そんな異人である両親のような2人を演じた、"片岡鶴太郎"さんや"秋吉久美子"さんの飾りすぎない演技が凄く良くて、むしろそれだけでも泣けるのだ。

…とまぁ、ザックリレビューしたのだが、この素晴らしい原作を持つ本作を、アンドリュー・ヘイ監督がどのように映像化するのか楽しみで仕方がない。ヘイ監督の作風を知っている私としては期待しかないのだが、ファンタジー作品とヒューマンドラマを行き来する大林監督の作りも相当なものだった。私も最近、大切な飼い犬や中学生の頃には祖母を亡くしているので、こういった作品はめちゃくちゃ刺さったし、"自分もこういったチャンスが訪れたら何話すだろう?"と考えさせられた。

本当に大切な作品となった。機会があれば、原作本の方も読んでみたいなと感じた。
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