わかうみたろう

異人たちとの夏のわかうみたろうのレビュー・感想・評価

異人たちとの夏(1988年製作の映画)
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ラストに観客を置き去りにするような演出があったが、それで良い。むしろ孤独とか悲しみに浸ってきた映画のノスタルジックな雰囲気から観客を引き剥がすことで、異人たちと過ごした時間とは別の現実に戻り、あれはどうかしてたんだ、と前を向いて生きる主人公の台詞をすんなりと後押しできる。喪失からくる苦しさとその穴を埋めるために愛を求めてしまった事を冷めたような、けどたしかに愛はあったような気もするという温かいような結末を迎えることは現代の映画では少なくなってきてるのでは。苦しさに目を向けすぎる傾向のある現代の風潮の中ではわからない要素がたくさんあった。可笑しみのあるポップさが所々散りばめられており良かった。俺は苦しいんだ!と言わないでいつの間にか快楽にどっぷり掴んで身を滅ぼしかけていく主人公の姿と、その経験から離れた日常に戻っていく感覚からは多く学べるところがあるだろうと、リメイク版と比較して感じた。