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ローズのtakのレビュー・感想・評価

ローズ(1979年製作の映画)
4.3
確か中学生の頃、叔父に連れられてダスティン・ホフマン主演作を映画館で観た時だ。予告編の中で妙に印象に残る音楽映画があった。ベット・ミドラー主演の「ローズ」である。主題歌The Roseがヒットしていて、ラジオからよく流れていたから、特に印象に残ったんだと思う。ピアノと幾重にも重なるボーカルが感動的で、好きな曲だった。

映画の内容は深く知らなかったが、とにかく観てみたくって。うちの親は認めてくれなかった。映画はジャニス・ジョプリンをモデルにした女性歌手の物語で、ドラッグ、セックス、ロックンロールの世界だと聞いた。そりゃ親もいいよとは言わないよな。それ以後ずっと観たい映画の一つだった。

初めて観たのは社会人になってから。映画冒頭のWhose Side Are You On。ビートとかき鳴らすギター、高らかに響くホーンセクションに身体がじっとしていられない。ライブで聴衆に語りかける。
ブルースを聴いたのは生まれた時よ。
愛って素敵よね。
そしてWhen A Man Loves A Womanのイントロに流れ込む。なんてカッコいい。この場面最高😆。いろんなアーティストがこの曲を歌っているけど、この映画のベット・ミドラーが僕にとってはスタンダードだ。

ところが、話が進むにつれてヒロインに腹が立ってくる。いけ好かないヒロインの言動にイライラしながらも、圧倒的なライブシーン、マーク・ライデル監督のドラマティックな演出に引き込まれてしまう。クライマックスのライブ会場の空撮。ビルモス・ジグモンドのカメラに捉えられたステージの輝きに、「未知との遭遇」のマザーシップに匹敵する感激を味わった。

コンサートオープニングに流れて、楽器が増えて8小節ごとに盛り上がっていくインストロメンタルCamilla。この曲は後にレベッカがライブのオープニングで演奏していたっけ。NOKKOはジャニス好きだったから、そのつながりでの選曲なのかな。

疲労と薬物中毒、恋人にも去られて失意の中にあるヒロインが歌う、渾身のロッカバラードStay With Me。いけ好かない女と思っていたはずなのに、聴衆だけに素の自分を見せたような姿に心が震える。このクライマックスには力業でハートを掴まれた。しかし彼女にはもう聴衆にも現実にも向き合える力は残っていなかった。

かすれて呟くような声で歌うラスト。そこに重なる名曲The Rose。僕はこの曲の歌詞に何度か勇気づけられてきた。ジブリの「おもひでぽろぽろ」のエンドクレジットで流れた時、「ローズ」の記憶と重なって涙がにじんだ。

鑑賞記録は初回を記す。
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