荒野の狼

砂の上の植物群の荒野の狼のレビュー・感想・評価

砂の上の植物群(1964年製作の映画)
2.8
吉行淳之介の小説って、これじゃないんだよなあ。時期的な事もあるのだろうが、この時代の邦画じゃなくて、洋画で撮れば何倍もいい映画になるはずだ。例えば、ドヌーブを使ったブニュエルで、とか。この手のエロには、気品が伴わなければ意味がない、でないと単なるスケベオヤジの変態映画になってしまう。確かに中谷昇は悪くないし、ここでは彼以外の役者は浮かばない。西尾三枝子もハズしてはいない、しかし一番肝心な稲野和子が不可(いけ)ない、ベタに安っぽい悪女過ぎるのだ。主人公の中谷が惚れる女にしては魅力に欠けるのである。これでは同時に折角の中谷も浮かばれない。この女の人選さえ誤っていなければ、なにも敢えてアートを気取らずとも、もっと完成された芸術作品として吉行淳之介の世界を真っ当に描けたのではないかと思う。いっその事、マジで宮城まり子でもよかった。吉行淳之介の小説から「上品さ」を読みとれぬなら、彼の作品を鑑賞する資格は無い。
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