odyss

砂の上の植物群のodyssのレビュー・感想・評価

砂の上の植物群(1964年製作の映画)
2.5
【モダニズムの限界、作家の限界】

吉行淳之介の小説(私は未読)を原作にした映画ですが、今の目で見ると製作年である1964年当時のモダニズム的な作りがちょっと鼻につきますね。

現代絵画や古典音楽を使いながら、当時としては斬新な人間模様、というか愛人関係を表現していますが、そういう工夫がかえって古びやすいのではないかと思ってしまいました。

血縁関係の謎が全体を引っ張る筋書きの底流をなしていますけれど、それも最後ではあっけない幕切れとなり、それまでは絵画や音楽で予定調和の破壊が暗示されているような気がしていたのですが、それがどこかに消えてしまう。肩透かし、といった印象です。

もしかしたら監督の腕が悪いからでは必ずしもなくて、吉行淳之介自身が古びやすい作家だったからかもしれません。上記のように私は原作小説は未読ですが、それ以外の吉行作品は多少読んでいます。しかし今にいたるまで心に痛切に残っているものがない。悪い意味での風俗作家だったから、なのでしょうか。
odyss

odyss