ポンコツ娘萌え萌え同盟

長恨のポンコツ娘萌え萌え同盟のレビュー・感想・評価

長恨(1926年製作の映画)
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映像部分は13分の断片だから点数は判定不可能。それも終盤。
(本編13分+1分半近くは作品の復元や経緯の説明等)
ただ、全長が仮に残っていたら十中八九サイレント時代劇を代表する傑作の一つになると思わせる熱量。
残っているのが数馬を演じる大河内傳次郎の殺陣アクションに並みならぬ鬼気と迫力を感じる。
新選組の大群に包囲される中の立ち回りが冴える。移動撮影から、劣勢を非常に強く連想させるようにに場面の全身を映した俯瞰カットと、対抗していくように数馬を近距離で映したカットも盛り込まれアクションも表情もよく映る。

だが、その表情こそ本作の肝だ。竜巻の様にグルグル回る御用の提灯、殺陣の中で次第にボロボロになっていく数馬。
大群の劣勢の中でもヒーローが活躍する姿は、多くの時代劇の中でも醍醐味の場面だ。
でも「長恨」は迫力があるが全くかっこよくない。
時代劇のヒーローが大勢相手にかっこよを崩さないのに、「長恨」の大河内傳次郎が見せる眼は朦朧だし最早思念のみで身体が”動かされている”人間としか思えない。

時代劇から離れれば、彼の状況が「ゴジラ」の芹澤博士みたいに幸福になれと別れを告げてゴジラと共に果てる、もしくは「彼奴は顔役だ!」の雪の階段で一人果てたらどんなに良かっただろうか。
だが数馬が追い詰められ多数の縄紐に身体を括り付けられて挙句の果てには無様に階段から落ちて果てる。その姿に”かっこ良さ”も”美しさ”も全くない。思念が無残に散るとしか見えないものだった。
娯楽とドラマの融合性の質が非常に高い一つ