「なぜ彼女は泣かない」

　殺人事件を再現ドラマ化し、目撃情報などを募る番組『クライムタイム』。その番組が取り上げた、女性が片方の目玉をくりぬかれて殺された事件の犯人役に、無名の新人俳優ボビーが抜擢される。
　とことん役になりきることに異常なこだわりを持つボビーは、警察に事件の詳細を聞いたり、挙句の果てには被害者の死体を実際に見に行ったりと、病的な行動を起こす。
　しかし、彼のおかげで番組は大反響。ボビーも一躍スターダムにのし上がる。
　そんなある日、本当の犯人がボビーに電話で接触をし始める。

　なかなかの狂気。犯人が殺人を続ければ、その都度再現ドラマが作られ、ボビーは仕事にありつけるし、TV局は視聴率を望める。つまり、犯人が犯行をやめるか捕まったりしたらお金を稼げない人が出てくるというわけ。
　で、実際に犯人はある理由から殺人をやめてしまう。そしてボビーに「お前がやれ」と促す。
　果たしてボビーは、仕事欲しさに模倣犯となり、自ら殺人を犯して、再現ドラマで自分自身を演じるというややこしい状況を作り出してしまうのか……。

　何か、人間の嫌な部分を見せられた感じ。

　ところで本作、エマ・ロバーツが出てるらしいんだけど、気づかなかった。

女性の目玉をコレクションする男と、その犯罪を再現番組で演じる男がやがて交わる。「バニシング消失」「失踪」にもあった演出がいくつかある。いかにも90年代な題材でワクワクするしオープニングのマリアンヌ・フェイスフルのライブシーンも気分を盛り上げてくれる。

面白かった！！目玉コレクターは殺人を犯すことでアイデンティティを見出し、若手俳優はそれを実録ドラマとして演じることでキャリアアップを図る相利共生。｢衝撃のラスト！｣系譜の映画でもあった。ピート・ポスルスウェイトも出てるし、映画好きを自称するなら、いい加減『ユージュアル・サスペクツ』も観なければ…。

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