TAK44マグナム

Cut カット!のTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

Cut カット!(2000年製作の映画)
2.8
「Cut」の本当の意味を教えてやろう。
「切り裂いて、殺す」だ!


オーストラリア産のスラッシャー+オカルトなホラー映画。
オーストラリアでは大ヒットしたらしいのですが、自国産のスラッシャーホラーが物珍しかっただけじゃないの?っていう出来映え。
でも、セックスしたら殺されたり、スラッシャーホラーのお約束はちゃんとクリアしていて律儀な作り。
とりたてて面白くはないけれど、観るにたえないほどでもないって感じです。

主演は、ジョン・ヒューズ作品のヒロインなどで有名なモリー・リングウォルド。
「ブレックファーストクラブ」の人ですね。
ちょいと恰幅がよくなったような気がしますが、お話に合わせて年齢差のある女優役を演じております。

あと、何故かカイリー・ミノーグがホラー映画「熱い血」の監督役で冒頭のみ出演してまして、大変酷い目にあって即退場(汗)
「スクリーム」におけるドリュー・バリモアみたいな役目でしたな。
でも、掴みはOK!
と思ったら、あっさりと殺人鬼がモリー・リングウォルドに撃退されちゃいます。
一体これは・・・と思っていると、それは数年前の事件で、いまや呪われた未完成のホラー映画として「熱い血」は都市伝説化しているという設定。
そして、「呪われているから手を出すな」と忠告されたにもかかわらず、よせばいいのに血気盛んな若手監督とプロデューサーが「熱い血」を完成させようとします。
しかも、モリー・リングウォルドを主演女優として撮影に引き戻すのです。
モリー自身も「自分の中で決着をつけるため」と、半ば嫌々ながらも引き受けます。
すると、殺人鬼スカーマンが復活、キャストやスタッフを次々と殺害してゆくって寸法でして、これぞ典型的なスラッシャー。
マスクの殺人鬼ということで「スクリーム」のような犯人探しが楽しめるのかと思いきや、スカーマンは人間ではなく、超常的な存在だったのでした。
つまり、本当に呪いだったんですね。途中まで真剣に犯人の予想していた自分が恥ずかしい。
だって、それっぽい演出もあったんだもの・・・
あんまりにも皆んな死んでしまうものだから途中で犯人候補が全滅して、「これ、オカルトじゃん!」って気がついたけれど(汗)

そんなわけでボディカウントは10人以上だし、首チョンパに丸焼きと、殺害方法もそれなりにヴァリエーション豊かでもあるのですが、いかんせんさっぱり盛り上がらず。
スカーマンが溶解人間みたいに溶けてゆくのが見せ場なのでしょうけれど、この映画ならではの何かが足りない。
ファイナルガールとの攻防が殆ど無いに等しいからかもしれませんね。
ちゃんと因縁話もあるのに全然活かされないし。
唯一驚いたのは、どう考えても死んだと思った人物がものすごくタフだった事ぐらいかな(苦笑)?
この辺りも、もしかしたら「スクリーム」を意識しているのかも。

「スクリーム」を意識と言えば、劇中作である「熱い血」がそもそも「スクリーム」っぽい。
電話かかってきて「次はお前だ」とか。
で、「熱い血」はカイリー・ミノーグが演じる女流監督がメガホンとっているわけですけれど、この監督が非常に優れた人材だと強調されるんですね。
でも、モリー・リングウォルドが襲われる一連のシークエンスを観るかぎり、どこがどう優れた演出なのか理解できないし、致命的につまらない映画にしかみえません。
完成していたとしても駄作だったと思うのです。
いや、絶対に駄作でしょう。
公開しなくてよかったレベル。
ウーヴェ・ボルの方がまだマシかもしれません!

しかも、「熱い血」ってフィルムが何巻も残されている割には、冒頭部分の短いフッテージ(しかも失敗テイク)しか劇中で上映されないんですよね。
だから、どんな話なのか全くもって分かりません。
それを主人公たちが完成させようとするのですが、この撮影隊も少数精鋭すぎて、ほぼ自主映画みたいな布陣。
ちゃんとした商業映画なら、もう少しスタッフの数も必要でしょうよ(一応、記者会見の場面もあるぐらいなので、それなりの規模の商業映画であるはず)。
キャストに至っては、モリー・リングウォルドとスカーマン役の男優だけ。
こんなんで、どうやって長編映画を製作するの?
スカーマンが出ずっぱりな脚本なのか?
殺される役を1人10役ぐらいでモリーが全部演じるのか?
細かいようですが、どうしても気になってしまいました。


映画自体に取り憑いている殺人鬼というアイデアは「ファイナルガールズ」より早かったですが、頭ひとつ飛び抜ける何かが足りない・・・観ていて、それが何とももどかしい一作でした。


あ、ただ一点だけ。
顔は爛れているし、凶器のハサミは持ってるし、どこからどう見てもお前が怪しい状態にもかかわらず、警察官に銃をむけられると、「僕じゃありませんよ〜」などとふざけた言い訳を始めるスカーマンは、バカバカしくて面白かったですね。
映画の撮影に参加して、狙う相手に注意される珍場面もあるし。
最初から最後まで、そういった「おふざけキャラ」で通せば、それはそれで良かったのに(苦笑)


ブラットパックの女王であったモリー・リングウォルドが「ぶっ殺したる!」と息巻く映画が観たいなら、まことに遺憾ながらオススメします。


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