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MEMORIESのspitfireのレビュー・感想・評価

MEMORIES(1995年製作の映画)
4.4
『千年女優』からの今敏繋がりで鑑賞。短編3作からなるオムニバス・アニメ映画であり、うち1本目の『彼女の思い出』が今敏脚本なのです。
大友克洋、森本晃司、今敏、菅野よう子にクレジットをよく見ると磯光雄もいたりして――これほどの才能が集まりながら本作が話題に上りにくかったのは、2作目に地下鉄サリン事件を思わされる描写があったためでした。悪意ではなく、全くの偶然なのですが。
感想は以下に個別で書きますが、共通しているのはミチミチ動く異常な作画と、カオティックなSF的イマジネーションで、大友さんらしいなぁと思います。どれも好みでとても良かったです。

1. 彼女の想いで
宇宙で遭難信号をキャッチし救難に向かった先で、死んだオペラ歌手の思い出に飲み込まれる……というセイレーンみたいなSFホラー。突如として幻に引きずり込まれるあたりに、今敏作品一連のテーマ性をしっかと感じ取れるかと。気合の入ったクライマックスには息を呑みました。

2.最臭兵器
異臭と黄色い煙、代謝異常に劇伴の荒れ狂うサックスときて、それは屁だよな……と思わせる滑稽さと、それとは不釣り合いな深刻な被害に細密なミリタリー描写。等比級数的に加速する災禍は笑い飛ばすしかありません。

3.大砲の街 
ワンカット風に制作・撮影されていて、背景美術からはスチームパンク+ミリタリーな作品世界の繋がりをモリモリと感じられます(場面転換自体は結構ある)。一方で旧共産圏的全体主義の閉塞感が常に漂い、遠くへ飛び立つ砲弾の行く末は描写されず、狭い世界が煮詰まっていくかのようです。あと、斜めに突き出た真っ赤な砲塔にはロシアンアヴァンギャルド成分を感じました。
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