このレビューはネタバレを含みます
殺された弟の復讐劇。
戦争が背景にあって、サスペンス仕立てでもある。
「死にたくないと思ってたやつはみんな死んだ。俺みたいなやつが生き残っちまった。」
戦争や軍隊の厳しい規則の中にあって似つかわしくなさそうな兵士たちの本音がセリフを通して漏れる。死にたくない、死ぬんじゃないぞ。お前はまだ若いんだ、生きろ。
恐ろしいのは戦争というよりも戦争をおっぱじめてしまう人間の方だし、生きるか死ぬかの状況下でも金目当てに仲間を殺してしまう人間の欲ぶかさ、心の脆弱さ。
そんな中、たった一人で、軍を抜け出し記者と偽って、弟の死の真相を暴こうとする大久保。見ている私は大久保に感情移入もするし、彼が死なずに復讐を遂げて欲しいと願ってしまう。絶対的な正義なんてないと分かっていながら、彼だけが物語のなかで唯一の正義であるかのようにも思えてくる。そんな大久保も許嫁のトミからすればただのひどい男である。
ラブストーリーはコーヒーに注がれるミルクのようで。戦争の中に色恋沙汰がなければ本当にただ血生臭いだけの話になってしまう。映画にするなら、やっぱりこういうのをストーリーに組み込まないと、大衆の口には苦すぎるのだろうか。
馬賊のボスに気に入られる主人公。どぶ鼡作戦のときもそうやったけど、主人公は日本軍の中では孤立してて、むしろ中国側でもアウトローな人たちと仲良くなったり協力したりする。そこもおもしろい。
この当時、演じている俳優や作り手の人たちは戦争を体験した人だったろうし、どんな風に思いながら撮ってたんだろうな。セリフもちゃんと(発音は下手やけど)中国語でやってて、中にはほんとに大陸にいたことある人もいたりして。
冒頭、三船敏郎の怪演がキョーレツで最後まで脳裏に焼き付いてた。