高円寺ぱか

独立愚連隊の高円寺ぱかのネタバレレビュー・内容・結末

独立愚連隊(1959年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

セリフがかっこいい。いや、一部だけじゃない。全部だ!!!

当然、時代性のフィルターはあると思う。渇いた死生観や貞操観念は今やったら問題になりそうだし…でもこういうのがかっこいいというのはありますよね。(当時も批判はあったみたい)

拾うべきところが多すぎるけれど、荒木の導入がべらぼうにいい。冒頭の山と同じように寝そべっていて、はたと飛び降りると馬がいるのもいいし、そのあとニコニコ笑いながら山岡としゃべっているのもいい。山岡の自分は臆病だと語る口ぶりは、山岡自身の善性を立ち上げることによって荒木を持ち上げていく。危ないと掌がむず痒くなるの下りも、相当の修羅場をくぐっていることを感じさせる。また、藤岡の処刑を止める流れもいい。只者ではないことを知識と腕前で示し、人の死に平然としながらそれを止めようという達観した男らしさも見せていく。



荒原に横たわる男。起き上がり、崖から飛び降りると、下に馬。走りだす。タイトル。

所謂大東亜戦争末期北支戦線山岳地帯。新聞記者荒木は分隊と合流。「危なくなってくると掌がこうむず痒くなってくるんですよ」とニコニコ語る彼に分隊長・山岡少尉は好意を持ち、独立愚連隊に向かうという彼に警告しながらも将軍廟に案内する。

将軍廟の慰安婦トミは荒木に見覚えがあるようだ。

荒木が訪ねたとき、分隊長代理・藤岡中尉は射撃場で密偵を銃殺刑に処していた。一人目は壮年の男が撃たれ、続いて二人目は若い女。荒木は藤岡の銃口を抑え、こうするとブローニングは撃てないと宣い、軍上官の名前を出し処刑を諦めさせる。ついでにその百発百中の腕を示してみせる。撃たれたはずの男が走りだす。荒木はタヌキだと笑う。

荒木は藤岡から部隊の様子を聞く。本来の部隊長は城壁から落ち気が違ってしまったらしい。その様をトミと先輩の花子は笑って見守る。花子は金を貯めて東京で喫茶店を出すつもりだという。

荒木は去り際、壁の名簿を見て大久保見習士官について尋ねる。彼は独立愚連隊に言った直後死んだらしい。木札は捨てられる。一人に、自分にお熱の慰安婦がいると聞く。

山岡は獄中に知り合いの杉本一等兵を見つける。何をしたのか聞くが、彼は答えない。

その慰安婦トミは部屋に入った途端、「大久保軍曹」と語りかけ、反射的に荒木は銃口を向ける。看護婦だったトミと荒木は北京の病院で将来を誓い合ったが、荒木が姿を消し、トミは両親を喪い花子に拾われた。トミはもう離さないというが、荒木は大量の金を残し消える。花子は十分に喫茶店ができるお金だと喜ぶが、トミは泣き崩れる。

藤岡は幾許かの兵をつけ部隊長を送り出し、厄介払い。荒木も同時に抜け出し独立愚連隊を目指すが、砲撃の中ぐるぐると回ってしまい、トミに追いつかれてしまう。泣きつかれるが、置き去りにする。

荒木は途中、錫九なる中国人と出会う。錫九は荒木の銃の腕前を知っていて、荒木は驚く。錫九は道案内を申し出るが、案内役は銃殺刑から救った女・ヤンだった。彼女は煙に巻くようなことばかりをいい、荒木は豆だぬきと呼ぶ。案内された先には見張りの死体があり、荒木は死体を運び独立愚連隊に潜入する。

中村兵長は死体を見ても冷淡(訓練中の補充兵に見本だという)。えらい簡単だという荒木に中村は自分もすぐそうなるからと答える。曰く、大久保見習士官は心中で死んだという。しかも戦闘中に。それに怒った巡察は独立愚連隊を永久に前線に残すと命じた。

荒木が現場を検めているところに、飄々とした石井軍曹が現れる。彼は荒木の面構えを「憲兵軍曹」だという。石井は警告するが、荒木は心中事件の探偵小説を続けるという。

一方、失踪したトミを心配する花子は、思わず二人が北京病院で出会ったという馴れ初めを漏らしてしまう。

行き倒れたトミを部隊が運んでくる。ある男が悪戯しようとするが、荒木が阻止。

部屋を訪れた荒木に、石井は銃を渡す。銃弾は銃口に合わない。探偵小説の基礎ですなあ。

起き上がったトミを石井は連絡手にする。そこに藤岡が連絡をしてくるが、トミは思わず荒木の本名「大久保」を言ってしまう。大久保の名を調べ、大久保見習士官の兄だと突き止めた藤岡は、その捕縛を命じる。

荒木が大久保の墓に佇んでいると、ヤンが現れる。ヤンは大久保の心中相手の妹だという。彼女から形見を託されると、それは藤岡中尉・酒井曹長・立花(慰安所の元締め)の不正告発文書だった。荒木は将軍廟に戻ることに。

独立愚連隊に軍紀が訪れる。石井は軍紀につけて補充兵を返すことに。軍紀は荒木を大久保脱走兵だといい捕縛命令を出す。石井は中村にウインクとともに徹底的に探すよう命じる。

荒木は銃撃の中、馬を捨てる。

藤岡は全軍撤退命令を出す。独立愚連隊のみ残す判断に山岡は不満を持つ。

補充兵を乗せたトラックにトミも同情する。その行き先が危険だと荒木は警告するが、逆に捕縛されてしまう。予想通り爆撃されてしまい、その中でトミは絶命する。

藤岡、酒井、立花は金品を持って逃げようとする。目撃した山岡は告発すると息巻くが、酒井は銃撃。二発目をゆっくりと狙いをつける酒井は突如射殺される。「誰だ!」立花は奇声を上げ逃げ出す。銃。幕の陰から荒木がニヤニヤ笑いながら現れる。「お前どういうつもりで戦争に来た?」告発文を突き出す。二人を殺すための銃弾が多すぎる。藤岡は逃げ出す。

逃げ出そうとする立花を錫九一味が取り囲む。

藤岡を射撃場に荒木が追い込み、射殺する。

軍本部に電話を入れる荒木のところに立花が戻ってくる。錫九は去就を尋ね、荒木は独立愚連隊が気に入ってしまったから彼らを見届けると答える。

将軍廟に戻る命令を受けた独立愚連隊。引き上げようとする隊員に対し、石井は待ったを唱える。「どんな命令にも従う。これが我々の抵抗だ」一同は中国軍をやり過ごす作戦に出る。

だが作戦は失敗。激しい銃撃戦の末、全滅する。

錫九一味が戻ってきて、唯一息のあった荒木を救い出す。錫九は馬族だといい、荒木を歓迎するという。「大変なものを忘れた」荒木は独立愚連隊の跡地に向かい、トミの亡骸を回収し、埋葬する。「葬いだ」「馬鹿言え。祝言だ」祝砲を鳴らしながら、大久保トミ、と書かれた墓を背に一同は旅立つ。