よしまる

タイム・アフター・タイムのよしまるのレビュー・感想・評価

タイム・アフター・タイム(1979年製作の映画)
4.3
 寡作ながら名監督と思っているニコラスメイヤーによる、SFでありロマコメでありスリラーでありファンタジーであり…いろんな要素がごった煮の楽しい楽しいタイムトラベルもの。

 主役はかのSF作家、H・G・ウェルズ。
対するは古典的シリアルキラーで未だ正体不明のジャック・ザ・リッパー。

 19世紀に2人が友人だったという設定も荒唐無稽ながら、ウェルズが実際にタイムマシンを完成させていて実用していたというのはさらに無茶苦茶で、だがそれがとても良い。
 こういう思いついたもん勝ちな設定を、さもありげに巧みに描いた映画はたいてい面白いものだ。

 ウェルズを演じるのは「時計仕掛けのオレンジ」のアレックス、マルコム・マクダウェル。切り裂きジャックのほうは名バイプレーヤーのデビッド・ワーナー。
 ウェルズと恋に落ちるエイミーを演じたメアリー・スティーン・バージェンとマルコムはこの映画のあと、結婚している。

 このメアリー、どこかで見た顔だと思ったらバックトゥザフューチャーPARTⅢのクララ!公開当時は、ドクの相手とはいえなんでこんなオバさんをと思ったものだけれど、タイムアフタータイムで20世紀のOLが19世紀とリンクした、その真逆な設定をやっていたんだね〜。
 あんときはウェルズじゃなくてヴェルヌ大好きな役だったけれど、ドクの作ったタイムマシンの模型を見てハッとするシーンとか、本作知ってたらキュンものだ。いや、BTTFやっぱ奥が深いわ!

 タイムワープするときのエフェクトなんかはアナログながらそれっぽくてよく出来ているし、過去から未来へ飛んだ者がカルチャーショックを受けるのもありがちながら芸が細かくて、マルコムのアレックスとは思えないコミカルな演技も冴え渡る。

 切り裂きジャックも「90年前わたしは変人だったが、現在では素人だ Ninety years ago I was a freak. Today I'm an amateur.」という粋すぎるセリフを吐いている。
 まだ2度の世界大戦さえなかった世界に比べ、明らかに世の中が悪いほうへと進んでしまったことを象徴していた、と同時に、タイムマシンや宇宙戦争を描き、原爆や女性の社会進出などの未来を予言していたウェルズが、実際に90年後の未来を見て、絶望や期待を抱くという設定が秀逸。
 
 こうしたシリアスな要素を入れつつの、サスペンスやロマコメを織り交ぜた作風はそれこそBTTFを例に出すまでもなく、SFというジャンルだからこそ許される楽しみだと思う。巨匠ミクロスロージャのサントラも、古典とモダンのミックス感が良き。