トシオ88

去年の夏 突然にのトシオ88のレビュー・感想・評価

去年の夏 突然に(1959年製作の映画)
4.2
強烈な映画体験…。エリザベス・テイラー、キャサリン・ヘプバーン、モンゴメリー・クリフト、3人の名優による劇作家テネシー・ウィリアムズの悪夢のような戯曲の映画化作品。
ロボトミー手術で名声を博す精神外科医モンゴメリー・クリフト、しかし勤務する病院は州立で近代化が儘ならない。そんな中、精神錯乱の姪エリザベス・テイラーをロボトミー手術で治療してくれたら巨額の寄付を病院に約束すると大富豪未亡人キャサリン・ヘプバーンが声をかけてくる…。大富豪の家に招かれるモンゴメリー・クリフト、そこで聞かされるのは去年の夏、突然に亡くなった愛する息子の話だった…。どこか奇妙で虚ろで不可解な息子の生き様。そして登場するエリザベス・テイラー。心神喪失の筈なのにしっかりとした意思を持つ女性…、
やがて明らかになる深淵の闇の奥にある真実とは…。戯曲が原作だから台詞は凄まじく潤沢で濃厚、しかし二人の女優は一歩も退かず迫真の演技で火花を散らす。明るい筈のアメリカの闇。戯曲の姿をしたモダンホラーな内容。精神疾患、同性愛、近親相姦、殺人、加虐、色々な色の闇が直裁的な描写ではなく台詞の隙間からジクジクと染み出してくる…だから観ている方の脳幹がずっと刺激されて目が離せない。何よりも若きエリザベス・テイラーの美貌。そしてラスト10分の真相の果てに待つもの…。不意に現れる嘲笑する死神の姿も強烈。戯曲の中にこれだけのタブーを押し込んだ本作。カトリック系保守団体から轟々と非難されながらも大ヒットを記録したのは、やはり人間はタブーが好きな生き物。でもラストで「キャサリンはここに…」という台詞で救われ泣けた🥲🎬
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