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カサノヴァ最後の恋のtakのレビュー・感想・評価

カサノヴァ最後の恋(1992年製作の映画)
3.0
幾度も映像化された色事師カサノヴァの物語。その晩年を、アラン・ドロンが演ずるという異色作。恋多き美男のイメージがあるだけに彼らしい作品と思いきや、「時代錯誤の口が臭い年寄り」と罵られてしまう。

ドナルド・サザーランドがカサノヴァを演じたフェリーニ監督作でのお盛んなイメージとはまったく違うカサノヴァ像。かつての自信はどこへやら、長年連れ添った下僕に励まされる姿に、年齢には勝てないのかなあ…と寂しくなる。

カサノヴァと下僕は大人の知恵ってやつなのか、結構汚い手段で彼女の恋人を罠にかける。彼に代わって寝室に忍び込むのだが、一夜が明けて朝の光が差した時…。ビターな結末と故郷ベネチアへの寂しい帰郷が心に残る作品であった。当時60代に近づいていた年齢のアラン・ドロン。多少情けない役柄ではあるが、やっぱりスマートでカッコいいのは変わりない。自分がその年齢に近づいた頃に、改めてこれを観たらどう思うだろ。

カサノヴァの標的(恋のお相手とは敢えて書きません)となる娘を演ずるのは、フレンチポップスのアイドルだったエルザ。知的な美しさはこの映画の見どころ。代表曲のT'en va pas(哀しみのアダージョ)は、日本ではエドウィンのCMで使用され、原田知世のカバー(邦題は「彼と彼女のソネット」)で知られている。彼女の貴重な映画出演作。
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